解説
水にとかした物質は、冷やしたり水を減らしたりすると、ふたたび固体になって出てきます。どれだけ出てくるかは「溶解度」を使った引き算で求められ、定期テストでは計算問題としてよく出題されます。言葉とグラフを整理してから、テストに出る計算の型を順番に解いていきます。
前の回のおさらい 溶質・溶媒・水溶液
水にとけている物質を溶質、とかしている水を溶媒といいました。溶質が水にとけた液全体が水溶液です。
今回考えるのは、この溶質が水にどこまでとけるのか、そしてとけた物質をどうやって取り出すのか、という2つです。
1溶解度と飽和水溶液
水に物質を少しずつ入れていくと、はじめはとけますが、ある量をこえると、とけきれずに底に残るようになります。物質がそれ以上とけなくなった状態を飽和といい、物質をとけるだけとかした水溶液を飽和水溶液といいます。
では、どこまでとけるのか。その量を表すのが溶解度です。溶解度は、100gの水にとける物質の最大の質量で、単位はgです。溶解度は物質の種類によって決まっていて、同じ物質でも水の温度によって変わります。
ここで取りちがえやすいのが、溶解度と「今とけている量」です。たとえば、40℃の水100gに硝酸カリウムを50gとかしたとします。40℃での硝酸カリウムの溶解度は63.9gなので、この水溶液はまだ飽和していません。
63.9g-50g=13.9g
あと13.9gとかせる、というのが答えです。今とけているのは50g、とけることのできる最大の量が63.9gで、この2つは別の数です。溶解度はgで表す「量」、飽和はもうとけない「状態」と分けて覚えると、用語の問題で迷わなくなります。
2溶解度曲線と再結晶
溶解度と温度の関係を表したグラフを溶解度曲線といいます。横軸が水の温度(℃)、縦軸が100gの水にとける物質の質量(g)です。縦軸は水溶液の質量ではなく、水100gあたりの量だという点を読み落とさないでください。
硝酸カリウムは、0℃では13.3gしかとけません。ところが60℃では109.2g、80℃では168.8gまでとけます。温度が上がるほど、曲線の坂がどんどん急になっていきます。
一方の塩化ナトリウム(食塩の主な成分)は、20℃で35.8g。温度を上げても下げても、とける量はほとんど変わりません。グラフにすると、ほぼ平らな線になります。硝酸カリウムは急な坂、塩化ナトリウムはほぼ平ら。この形のちがいが、次の「取り出し方」を決めています。なお、グラフから値を読み取るときは目もりの間を読むことになるので、「約32g」のように「約」をつけます。
水にとけている物質を取り出す方法は2つあります。
1つ目は冷やす方法です。硝酸カリウムやミョウバンのように、温度によって溶解度が大きく変わる物質は、高い温度でとかしてから冷やすと、とけきれなくなった分が固体になって出てきます。硝酸カリウムは冷やして取り出すというのが、テストの定番の答えです。
2つ目は水を蒸発させる方法です。塩化ナトリウムは温度で溶解度がほとんど変わらないため、冷やしても固体はほとんど出てきません。そこで、とけていられる水そのものを減らして取り出します。塩化ナトリウムは水を蒸発させて取り出すのは、この理由からです。「なぜ塩化ナトリウムは冷やして取り出さないのか」は記述問題でよく聞かれるので、理由まで自分の言葉で書けるようにしておくと安心です。
実験では、試験管の中で物質を加熱してとかし、それを水につけて冷やします。出てきた固体は、ろ過で水溶液と分けて取り出します。ろ過では液をガラス棒に伝わらせて注ぎ、ろうとのあしのとがった方をビーカーの壁につけるのでしたね。
取り出した固体をルーペや顕微鏡で見ると、規則正しい形をしています。このような固体が結晶です。結晶の形は物質ごとに決まっていて、塩化ナトリウムはさいころのような立方体、ミョウバンは正八面体、硝酸カリウムは細長い柱のような形です。テストでは、結晶のスケッチから物質名を答える問題がよく出ます。
固体の物質をいったん水にとかし、もう一度結晶にして取り出すことを再結晶といいます。再結晶でいちばん押さえたいのは、純粋な物質を取り出せるという点です。少しまざっていたほかの物質(不純物)は量が少ないので、冷やしてもとけたまま水溶液に残ります。そのため、出てくる結晶はほぼ目的の物質だけになります。
1種類の物質だけでできているものを純物質(純粋な物質)、2種類以上の物質が混ざったものを混合物といいます。食塩水のような水溶液は、塩化ナトリウムと水が混ざっているので混合物です。再結晶は、混合物から純物質を取り出す方法の1つです。
3出てくる結晶の質量を計算しよう
計算の公式は、ことばの式で1つだけです。
出てくる結晶の質量=とけていた量-冷やしたあとの温度の溶解度
これは水が100gのときの形です。
例題1 60℃の水100gに硝酸カリウムをとけるだけとかし、20℃まで冷やした。出てくる結晶は何gか。(硝酸カリウムの溶解度は、60℃で109.2g、20℃で31.6g)
とけるだけとかしたので、とけていた量は60℃の溶解度と同じ109.2gです。20℃では31.6gまでしかとけていられないので、その差が結晶になります。
109.2g-31.6g=77.6g
答えは77.6gです。引き算の向きを逆にしたり、60℃の溶解度だけを答えたりするまちがいが多いので、「とけていた量から引く」という順番をいつも確かめてください。
例題2 80℃の水100gに硝酸カリウムをとけるだけとかし、40℃まで冷やした。出てくる結晶は何gか。(溶解度は、80℃で168.8g、40℃で63.9g)
168.8g-63.9g=104.9g
答えは104.9gです。例題1と同じ形なので、数字が変わっても手順は変わりません。
例題3 水100gに硝酸カリウム63.9gをとかした水溶液を冷やしていくと、何℃で結晶が出はじめるか。(硝酸カリウムの溶解度は、40℃で63.9g)
63.9gがちょうど溶解度になる温度を探します。40℃の溶解度が63.9gなので、40℃でちょうど飽和し、それより冷やすと結晶が出てきます。答えは40℃です。
テストで差がつく計算 水の量・濃度・蒸発
ここからは、定期テストで点差がつきやすい応用の型です。
例題4(水が100gでないとき) 60℃の水200gに硝酸カリウム100gを全部とかし、20℃まで冷やした。出てくる結晶は何gか。(20℃の溶解度は31.6g)
いちばん多いまちがいは、100-31.6をそのまま計算してしまうことです。31.6gは水100gのときの値なので、水が200gなら、とけていられる量も2倍になります。とける量は水の量に比例するので、まず水100gあたりで考えてから、水の量に合わせます。
31.6g×2=63.2g
100g-63.2g=36.8g
答えは36.8gです。
例題5(濃度との組み合わせ) 60℃の硝酸カリウムの飽和水溶液の質量パーセント濃度は何%か。小数第2位を四捨五入して答えなさい。(60℃の溶解度は109.2g)
質量パーセント濃度は前の回で出てきた式です。
質量パーセント濃度(%)=溶質の質量÷溶液の質量×100
割る数は水の質量ではなく、溶質と水を合わせた溶液の質量です。60℃の飽和水溶液は、水100gに109.2gがとけているので、溶液は100g+109.2g=209.2gになります。
109.2g÷209.2g×100=52.19…
小数第2位を四捨五入して、答えは52.2%です。
例題6(冷やしたあとの濃度) 例題1で20℃まで冷やしたあと、残った水溶液の質量パーセント濃度は何%か。(20℃の溶解度は31.6g)
結晶が出たあとの水溶液は、はじめの濃さから薄まって、20℃の飽和水溶液になっています。
31.6g÷(100g+31.6g)×100=24.01…
答えは24.0%です。
例題7(水を蒸発させたとき) 20℃の塩化ナトリウムの飽和水溶液(水100g)から、温度を変えずに水を50g蒸発させた。出てくる結晶は何gか。(20℃の溶解度は35.8g)
出てくるのは、蒸発させた水50gにとけていた分です。水100gに35.8gとけていたので、水50gならその半分です。
35.8g×50g÷100g=17.9g
答えは17.9gです。
例題8(飽和水溶液の質量で与えられたとき) 60℃の硝酸カリウムの飽和水溶液104.6gを20℃まで冷やした。出てくる結晶は何gか。(溶解度は、60℃で109.2g、20℃で31.6g)
104.6gは、水と硝酸カリウムを合わせた飽和水溶液の質量です。60℃の飽和水溶液は、水100gと硝酸カリウム109.2gで合わせて209.2gでした。104.6gはそのちょうど半分なので、出てくる結晶も例題1の半分になります。
77.6g÷2=38.8g
答えは38.8gです。このタイプは、水100gのときの飽和水溶液と比べるところから始めると解きやすくなります。
まとめ 溶解度から計算までを一本の線でつなぐ
この単元の流れを一本の線でつなぐと、こうなります。
水にとける量には限りがある(飽和) → その最大の量が溶解度(水100gあたり) → 溶解度は温度で変わる(硝酸カリウムは急な坂、塩化ナトリウムはほぼ平ら) → 硝酸カリウムは冷やして、塩化ナトリウムは水を蒸発させて結晶を取り出す(再結晶)
→ 不純物は水溶液に残り、純物質が取り出せる → 出てくる結晶の質量=とけていた量-冷やしたあとの温度の溶解度(水の量がちがえば比例で直す)
計算は、まず水100gあたりで考え、とけていた量から冷やしたあとの溶解度を引く。この形さえ身についていれば、例題のどの型にも対応できます。
公式・実験のまとめ
公式・実験 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
溶解度 | 100gの水にとける物質の最大の質量(g)。物質の種類と温度で決まる | 硝酸カリウム 20℃ 31.6g・60℃ 109.2g/塩化ナトリウム 20℃ 35.8g |
出てくる結晶の質量 | とけていた量-冷やしたあとの温度の溶解度(水100gのとき) | 60℃→20℃の硝酸カリウム 109.2-31.6=77.6g |
水の量がちがうとき | とける量は水の量に比例する(水100gあたりで考えてから合わせる) | 水200gなら 31.6×2=63.2g までとける |
蒸発で出てくる結晶 | 蒸発させた水にとけていた分(温度は変えないとき) | 20℃の塩化ナトリウム 水50gを蒸発 → 17.9g |
質量パーセント濃度 | 溶質の質量÷溶液の質量×100(溶液=溶質+溶媒) | 60℃の硝酸カリウムの飽和水溶液 52.2% |
実験 冷やして取り出す | 高い温度でとかし、冷やして出てきた結晶をろ過で取り出す | 硝酸カリウム・ミョウバン |
実験 水を蒸発させて取り出す | 温度で溶解度がほとんど変わらない物質は、水を減らして取り出す | 塩化ナトリウム |
用語のまとめ
用語 | 種類 | 意味 |
|---|---|---|
溶質 | 物質 | 水溶液で、水にとけている物質 |
溶媒 | 物質 | 溶質をとかしている液体。水溶液では水 |
水溶液 | 液 | 溶質が水にとけた液全体。混合物の1つ |
飽和 | 状態 | 物質がそれ以上とけなくなった状態 |
飽和水溶液 | 液 | 物質をとけるだけとかした水溶液 |
溶解度 | 量 | 100gの水にとける物質の最大の質量(g)。物質の種類と温度で決まる |
溶解度曲線 | グラフ | 溶解度と温度の関係を表したグラフ。横軸は水の温度、縦軸は水100gにとける質量 |
結晶 | 固体 | 規則正しい形をした固体。形は物質ごとに決まっている |
再結晶 | 操作 | 固体の物質をいったん水にとかし、もう一度結晶にして取り出すこと。純粋な物質を取り出す方法の1つ |
不純物 | 物質 | 目的の物質に少しまざっているほかの物質。再結晶では水溶液に残る |
純物質 | 物質の分け方 | 1種類の物質だけでできているもの。純粋な物質 |
混合物 | 物質の分け方 | 2種類以上の物質が混ざったもの。食塩水などの水溶液 |
硝酸カリウム | 物質 | 温度で溶解度が大きく変わる。冷やすと結晶がたくさん出る。結晶は細長い柱のような形 |
塩化ナトリウム | 物質 | 食塩の主な成分。温度で溶解度がほとんど変わらないので、水を蒸発させて取り出す。結晶は立方体 |
よくある間違い
溶解度は「今とけている量」ではありません。 とけることのできる最大の量が溶解度です。40℃の水100gに硝酸カリウムが50gとけていても、40℃の溶解度は63.9gのままです。
溶解度と飽和は、量と状態のちがいです。 溶解度はgで表す量、飽和はもうとけない状態を指します。「飽和水溶液」は、溶解度までとけている水溶液のことです。
塩化ナトリウムは、冷やしてもほとんど結晶が出てきません。 温度で溶解度がほとんど変わらないからです。取り出すときは水を蒸発させます。
水が100gでない問題で、溶解度をそのまま引かないでください。 水200gなら、とけていられる量も2倍です。まず水100gあたりに直してから考えます。
飽和水溶液の質量を、水の質量とまちがえないでください。 飽和水溶液の質量は、水ととけている物質を合わせた重さです。
質量パーセント濃度で割るのは、溶液の質量です。 溶質の質量を水の質量で割ると、60℃の硝酸カリウムの飽和水溶液が100%をこえる、というおかしな答えになります。
冷やしたあとの水溶液の濃さは、はじめと同じではありません。 結晶が出たあとの液は、冷やした温度の飽和水溶液になっています。
再結晶は、純粋な物質を取り出す方法です。 「もう一度結晶にする」ことだけでなく、不純物が水溶液に残り、純物質が取り出せるところまでセットで問われます。
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このテーマの単語テストと問題集は、下のボタンからダウンロードできます。どちらも答えと解説がついています。計算問題は途中式つきなので、例題と同じ手順で解けているか確かめてください。
言葉とグラフの流れをざっと確かめたいときはアニメー���ョン編を、計算の型を一つずつ練習したいときは詳細解説編の動画を見てください。
重要語句 飽和、溶解度、溶解度曲線、再結晶