解説
関東地方には、工場が集まる場所が大きく3つあります。東京・川崎・横浜を中心とする京浜工業地帯、千葉県の東京湾ぞいの京葉工業地域、そして関東の北の内陸に広がる北関東工業地域です。海ぞいと内陸で、工場が集まる理由がちがいます。
関東の工業の地図 東京湾のまわりと北の内陸
関東地方の工業は、場所で3つに分けて覚えます。
名前 | 場所 |
|---|---|
京浜工業地帯 | 東京・川崎・横浜を中心に、東京湾の岸から内陸に広がる |
京葉工業地域 | 千葉県の東京湾ぞい |
北関東工業地域 | 群馬や栃木など、関東の北の内陸 |
京浜には東京がふくまれますが、京葉には東京はふくまれません。京葉は、千葉県の東京湾ぞいの工業地域です。
北関東工業地域は、関東内陸工業地域ともいいます。どの県を入れるかは資料によってちがうので、「群馬や栃木など、関東の北の内陸」とおさえておけば十分です。
1京浜工業地帯 機械と印刷業、かつての日本最大
東京・川崎・横浜を中心に広がる工業地帯
京浜工業地帯は、東京・川崎・横浜を中心に、東京湾の岸から内陸に広がる工業地帯です。いろいろな工業がありますが、中でも機械工業の割合が高いのが特色です。川崎などの海ぞいには、石油化学コンビナートもあります。
かつては日本最大、今の1位は中京
京浜工業地帯は、1940年ごろに阪神工業地帯をぬいて、日本最大になりました。
ところが1960年代から、京浜では人や工場が集まりすぎる過密が進み、工場を建てにくくなりました。そこで工場は北関東などへ移り、京浜の地位は下がっていきました。
2024年の統計で、工業の出荷額がいちばん多いのは中京工業地帯(愛知県・三重県)で、72.3兆円です。京浜の「日本最大」は、過去の話として覚えます。
出典: 経済産業省・総務省「2025年経済構造実態調査」(2024年の値)より作成(単位: 兆円)。中京は愛知・三重の合計。
なお、京浜が何番めかは、資料によって変わります。京浜に埼玉県を入れる資料もあり、県の組み方で数字が大きく動くからです。どの組み方でも変わらないのは、中京がいちばん多いことです。
東京は印刷業がさかん
京浜工業地帯のもう1つの特色が、印刷業です。出版や印刷業は、東京を代表する工業です。
東京で印刷業がさかんな理由は、3つあります。
- 新聞や雑誌を読む人が多い
- 多くの情報が集まる
- 本屋さんや家に届けやすい
東京の中心の働きと、強く結びついた工業だといえます。
順位(2024年) | 都道府県 | 印刷業の出荷額 | 全国にしめる割合 |
|---|---|---|---|
1位 | 東京都 | 8,051億円 | 16.2% |
2位 | 埼玉県 | 7,246億円 | 14.6% |
3位 | 大阪府 | 4,532億円 | — |
出典: 経済産業省・総務省「2025年経済構造実態調査」(2024年の値。印刷・同関連業)より作成(単位: 億円。割合は全国計 4兆9,780億円に対する割合で、計算値)
ただし、京浜工業地帯でいちばん大きな割合をしめるのは機械です。2024年の統計で、京浜の出荷額のうち機械は48.1%、印刷業は3.4%です。印刷業は、全国の1.3%とくらべて割合が高い、という特色です。
2京葉工業地域 埋め立て地の製鉄所と石油化学コンビナート
千葉県の東京湾ぞいの臨海工業地域
京葉工業地域は、千葉県の東京湾ぞいに広がる臨海工業地域です。東京湾の遠浅の海を埋め立ててつくられました。
埋め立て地には、千葉市や君津市の製鉄所、つまり鉄鋼業の大きな工場があります。千葉市の南の市原市には、石油化学コンビナートがあります。
石油化学コンビナートは、石油を精製する工場を中心に、化学などの工場がパイプで結びついた工業の集まりです。1つの大きな工場の名前ではありません。関東では、市原市のほか、川崎や茨城県の鹿島にもあります。
京葉工業地域は、鉄や石油製品・化学製品などの、材料をつくる工業が中心です。
項目(2024年) | 値 |
|---|---|
千葉県の石油製品・石炭製品の出荷額 | 4兆1,713億円(全国1位。全国の24.7%) |
千葉県の出荷額にしめる石油製品・石炭製品の割合 | 26.1% |
千葉県の出荷額にしめる化学工業の割合 | 16.7% |
千葉県の出荷額にしめる鉄鋼業の割合 | 14.3% |
出典: 経済産業省・総務省「2025年経済構造実態調査」(2024年の値)より作成(単位: 億円・%。割合は計算値)
2024年の統計で、千葉県は石油製品の出荷額が全国1位です。
なぜ海ぞいに大きな工場が集まるのか
石油化学や鉄鋼の工場が海ぞいに集まるのには、理由があります。
- 船で原料を運び込みやすい
- 海を埋め立てて、広い土地を手に入れやすい
石油化学の原料の原油は、ほとんどが輸入です。だから、船で運ぶのに便利な海ぞいに工場が建てられました。
こうした海ぞいの地域を、臨海部といいます。臨海部には、鉄鋼や石油化学などの、重化学工業の大きな工場が集まります。
茨城県の鹿島臨海工業地域
茨城県の南東部の海ぞいには、鹿島臨海工業地域があります。砂丘を掘りこんで港をつくった、重化学工業の工業地域です。海ぞいの工業地域なので、このあと出てくる北関東の内陸の工場の話とは分けて考えます。
3北関東工業地域 内陸に広がった組み立ての工業
内陸にも工場が建つようになった
北関東工業地域は、群馬や栃木など、関東の北の内陸に広がる工業地域です。内陸は、海から離れた陸地のことです。
内陸に工場が広がった理由は2つあります。1つは、京浜の過密で、工場が北関東などへ移ってきたことです。もう1つは、工業の中身が変わったことです。
日本の工業地帯は海ぞいに多いのですが、機械などを組み立てる工業が中心になって、内陸にも工場が建てられるようになりました。
群馬県 養蚕と織物から自動車へ
群馬県では、戦前は養蚕や織物がさかんでした。養蚕は、かいこを育てる仕事です。
戦後は機械工業の工場が建てられ、工業団地の造成も進みました。自動車とその部品、電気機器、食品などの工場が進出しました。
群馬県の南東部にある太田市には、自動車工場があります。戦争中の飛行機の工場のあとにできた工場です。となりの大泉町には、電機の大きな工場と、関係する工場があります。
2024年の統計で、群馬県の出荷額のうち、自動車などの輸送用機械は36.5%です。およそ3分の1にあたります。
出典: 経済産業省・総務省「2025年経済構造実態調査」(2024年の値。輸送用機械器具)より作成(単位: %。群馬県の製造品出荷額にしめる割合で、計算値)
4工業団地と高速道路 北関東自動車道の沿線
工業団地
工業団地は、国や県などが工場を建てるために土地を整えて、工場を計画的に集めた土地です。北関東では、工業団地の造成が進みました。
北関東自動車道
北関東の工業で大事なのが、高速道路です。
北関東自動車道は、群馬の高崎から栃木の宇都宮を通って、茨城のひたちなかまでを結ぶ高速道路で、2011年に全線開通しました。東京から放射状にのびる関越・東北・常磐の3つの高速道路をつなぎ、茨城の港とも直接結ばれています。
これで、ものを運ぶのが便利になると期待されました。その後、北関東自動車道の沿線では、工場の進出が進みました。
北関東の工業は、次の2つを分けておさえます。
- 工業団地の造成が進んだこと
- 高速道路の沿線に、工場が進出したこと
北関東の工場で働く外国人
北関東の工場では、外国から働きに来た人も多く働いています。2025年10月末の統計で、群馬・栃木・茨城では、働く外国人のおよそ3人に1人が製造業で働いています(全国では約4人に1人)。
出典: 厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和7年10月末時点)別表5・別表7より作成(2025年10月末の値。事業主が届け出た外国人労働者のうち、製造業で働く人の割合)
5グラフの見分け方 化学の京葉、機械の京浜・北関東
工業地帯の帯グラフでは、業種の割合のちがいを見ます。
工業地帯・地域(2024年) | 金属 | 機械 | 化学 | 食料品 | 繊維 | その他 |
|---|---|---|---|---|---|---|
京浜工業地帯 | 9.7% | 48.1% | 17.0% | 11.8% | 0.6% | 12.8% |
京葉工業地域 | 23.2% | 9.8% | 42.8% | 14.9% | 0.2% | 9.1% |
北関東工業地域 | 13.7% | 43.3% | 9.1% | 16.5% | 0.6% | 16.8% |
全国 | 14.6% | 45.7% | 13.4% | 12.0% | 1.1% | 13.2% |
出典: 経済産業省・総務省「2025年経済構造実態調査」(2024年の値)より作成。化学には石油・石炭製品、食料品には飲料・たばこ・飼料をふくむ。京浜は東京・神奈川、京葉は千葉、北関東は栃木・群馬・埼玉の合計(単位: %。製造品出荷額にしめる割合で、計算値)。資料によっては、埼玉県・茨城県の入れ方がちがう。
いちばん見分けやすいのは京葉工業地域です。2024年の統計で、京葉は化学の割合が42.8%と4割をこえ、ほかとくらべてとても高くなっています。グラフの化学には、石油製品もふくまれています。
京浜工業地帯と北関東工業地域は、どちらも機械の割合がいちばん大きくなっています。機械がいちばん大きい工業地帯はほかにもあるので、機械だけでは見分けられません。京浜は「印刷業の割合が全国より高い」という特色といっしょにおさえます。
教科書のグラフは年が古いので、数字が少しちがうことがあります。見るのは、どの業種の割合が高いかという傾向です。
まとめ 海ぞいの臨海部と、内陸
関東の工業は、次のように一本の線でつなげられます。
京浜工業地帯は機械工業の割合が高く、東京では印刷業がさかん → 1940年ごろに日本最大になったが、1960年代から過密で工場が北関東などへ移る(2024年の統計で出荷額がいちばん多いのは中京工業地帯)→ 千葉県の東京湾ぞいでは、遠浅の海を埋め立てて京葉工業地域ができ、臨海部に製鉄所や石油化学コンビナートが集まる → 関東の北の内陸では、組み立てる工業が中心になって北関東工業地域が広がり、工業団地の造成と、高速道路の沿線への工場の進出が進む
海ぞいの臨海部と、内陸。工場が集まる理由を、場所といっしょに覚えておきましょう。
まとめの表
場所 | 何があるか | 押さえること |
|---|---|---|
京浜工業地帯(東京・川崎・横浜を中心に、東京湾の岸から内陸) | 機械工業・印刷業・川崎のコンビナート | いちばん大きな割合は機械。印刷業は全国より割合が高い(2024年の統計で、印刷業の出荷額は東京都が全国1位)。かつては日本最大だった |
京葉工業地域(千葉県の東京湾ぞい) | 製鉄所(千葉市・君津市)・石油化学コンビナート(市原市) | 遠浅の海を埋め立てた臨海工業地域。東京はふくまない。2024年の統計で化学の割合が4割をこえ、千葉県は石油製品の出荷額が全国1位 |
鹿島臨海工業地域(茨城県の南東部の海ぞい) | 重化学工業 | 砂丘を掘りこんで港をつくった。北関東の内陸の工場の話とは分けて考える |
北関東工業地域(群馬や栃木など、関東の北の内陸) | 自動車・電気機器などの工場・工業団地 | 組み立てる工業が中心になって内陸に広がった。群馬県は戦前は養蚕や織物、戦後は機械工業。太田市に自動車工場 |
北関東自動車道の沿線(高崎〜宇都宮〜ひたちなか) | 高速道路・沿線の工場 | 2011年に全線開通。関越・東北・常磐をつなぎ、茨城の港と結ばれた。沿線で工場の進出が進んだ |
用語のまとめ
用語 | 種類 | 意味 |
|---|---|---|
京浜工業地帯 | 工業地帯 | 東京・川崎・横浜を中心に、東京湾の岸から内陸に広がる工業地帯。機械工業の割合が高い |
京葉工業地域 | 工業地域 | 千葉県の東京湾ぞいに広がる臨海工業地域。東京はふくまない |
北関東工業地域 | 工業地域 | 群馬や栃木など、関東の北の内陸に広がる工業地域。関東内陸工業地域ともいう |
印刷業 | 工業 | 新聞・雑誌・本などを印刷する工業。東京では出版と結びついてさかん |
鉄鋼業 | 工業 | 鉄をつくる工業。京葉では千葉市や君津市の製鉄所 |
石油化学コンビナート | 工業の集まり | 石油を精製する工場を中心に、化学などの工場がパイプで結びついた工業の集まり |
臨海部 | 地域 | 海ぞいの地域。船で原料を運びやすく、埋め立てで広い土地を得やすいので、大きな工場が集まる |
内陸 | 地域 | 海から離れた陸地 |
工業団地 | 土地 | 国や県などが工場を建てるために土地を整えて、工場を計画的に集めた土地 |
過密 | 状態 | 人や工場が集まりすぎること。京浜では工場を建てにくくなった |
養蚕 | 仕事 | かいこを育てる仕事。群馬県で戦前にさかんだった |
北関東自動車道 | 高速道路 | 群馬の高崎から栃木の宇都宮を通って、茨城のひたちなかまでを結ぶ高速道路。2011年に全線開通 |
よくある間違い
2024年の統計で、工業の出荷額がいちばん多いのは中京工業地帯です。 京浜工業地帯が日本最大だったのは、かつての話です。
京浜工業地帯でいちばん大きな割合をしめるのは機械です。 印刷業は、全国とくらべて割合が高いという特色です(2024年の統計で、京浜3.4%・全国1.3%)。
京葉工業地域は千葉県の東京湾ぞいで、東京はふくみません。 東京をふくむのは京浜工業地帯です。
北関東工業地域は、群馬や栃木など、関東の北の内陸とおさえます。 どの県を入れるかは、資料によってちがいます。
群馬県では、戦前は養蚕や織物がさかんで、戦後は機械工業が中心になりました。 2024年の統計で、北関東工業地域の繊維の割合は0.6%です。
北関東では、工業団地の造成と、高速道路の沿線への工場の進出を、分けて覚えます。 どちらも、内陸に工場が広がったことにかかわります。
石油化学コンビナートは、工場がパイプで結びついた工業の集まりです。 1つの大きな工場のことではありません。
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京浜・京葉・北関東の場所と特色をざっと見たいときはアニメーション編を、工場が集まる理由やグラフの見分け方までくわしく知りたいときは詳細解説編の動画を見てください(動画は準備中です)。
重要語句 京浜工業地帯、京葉工業地域、北関東工業地域、石油化学