中学社会・地理・日本のさまざまな地域・No.72

瀬戸内工業地域

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解説

瀬戸内工業地域は、中国・四国地方の瀬戸内海の沿岸に広がる工業地域です。なぜ海ぞいに工場が集まったのか。石油化学コンビナートとはどんな工場の集まりか。鉄鋼と造船の町はどこか。この3つが、この単元の中心です。

瀬戸内工業地域の位置 瀬戸内海の沿岸に広がる工業地域

瀬戸内海は、本州・四国・九州に囲まれた海です。この瀬戸内海の沿岸に広がる工業地域を、瀬戸内工業地域といいます。

範囲は、岡山県・広島県・山口県の3県で考え、四国側の香川県・愛媛県を含めることもあります。統計の値は、5つの県を合わせて数えます。

日本の工業の単元では、太平洋ベルトという言葉が出てきます。瀬戸内工業地域も、阪神や北九州とともに、この太平洋ベルトの一部です。

1工業が海ぞいに集まったわけ 塩田の跡地・埋め立て地と海運

瀬戸内の海ぞいに工場が集まった理由は、大きく2つあります。1つは広い土地が使えたこと、もう1つは船で運ぶのに便利だったことです。

塩田の跡地が工場の土地に

塩田は、海水から塩をとるために、砂浜などにつくった場所です。

瀬戸内海の沿岸は、雨が少なく、潮の満ち引きの差が大きいところです。また、浅い海が沖まで続く遠浅の海岸が多くあります。そのため江戸時代から塩田がたくさんつくられ、日本でいちばん大きな塩の産地になりました。

ところが1970年代に塩のつくり方が変わり、塩田は姿を消しました。その広い跡地が、工場の土地などになりました。塩田が消えたのは昔の話で、今の瀬戸内に塩田が並んでいるわけではありません。

たとえば香川県の北部にある坂出は、江戸時代に塩田が開かれ、塩の町として栄えました。今は塩田の跡地や埋め立て地に、造船や化学などの大工場が立っています。

浅い海を埋め立てた土地

第二次世界大戦の後は、浅い海の埋め立てがさかんに進められました。浅い海は、埋め立てて工場の土地にしやすいからです。

こうしてできた海ぞいの埋め立て地に、鉄鋼や石油化学などの重化学工業が集まりました。塩田の跡地と、遠浅の海を埋め立てた土地。この広い土地が、1つ目の理由です。

船で運ぶのに便利な臨海部

日本は、原油や鉄鉱石などの原料を外国から輸入しています。海に面した工場なら、こうした原料を船で運びこんで加工するのに便利です。大きくて重い製品を、船で外国へ輸出するのにも便利です。

原料を輸入し、製品にして輸出することを加工貿易といいます。そして、船で原料や製品を運ぶことを海運といいます。

海に面した地域を臨海部といいます。臨海部は原料や製品を運ぶのに有利なので、工場が集まりやすくなります。これが2つ目の理由です。

昔からの海の道

瀬戸内海は、昔から近畿と九州・大陸とを結ぶ、大事な海の道でした。明治からは、九州の石炭などを船で運ぶのにも、さかんに使われました。土地の理由と船の理由は、セットで問われます。

2石油化学コンビナートと水島地区 パイプで結ばれた工場の集まり

石油化学コンビナートとは

石油化学コンビナートは、石油を精製する工場を中心に、化学などの工場がパイプで結びついて集まったものです。

となりあう工場どうしはパイプでつながっていて、ある工場でできた製品を、次の工場へ原料として送ります。工場どうしが、材料をリレーのように受けわたしているわけです。コンビナートは工場の集まりのよび名で、1つの工場の名前ではありません。

瀬戸内の石油化学コンビナート

瀬戸内では、山口県の岩国と広島県の大竹にまたがって、石油化学コンビナートがあります。日本の石油化学コンビナートは、この岩国・大竹から始まりました。

山口県の南東部にある周南(もとの徳山市など)には、大きな船が入る港があり、石油化学コンビナートや造船などの工場が並んでいます。愛媛県の東部にある新居浜も、海ぞいに化学・機械・金属の工場が並ぶ工業都市です。

倉敷市の水島地区

いちばん代表的なのが、岡山県倉敷市の水島地区です。水島地区は、倉敷市の南部、高梁川の河口の海ぞいに広がる工業地域で、鉄鋼と石油化学が中心です。

戦後、岡山県がここを工業の基地にしようと計画し、大きなタンカーが入れる港と、埋め立て地をつくりました。そこに石油の会社をよぶと、石油を精製する工場や石油化学の工場、製鉄所、自動車工場などが集まりました。つくっているのは、ガソリンやプラスチックの原料、鉄鋼、自動車などです。

項目(2024年)

値

倉敷市の製造品出荷額

5.83兆円(全国の市区町村で2位。1位は豊田市)

岡山県の製造品出荷額

9.94兆円

岡山県にしめる倉敷市の割合

58.6%

出典: 経済産業省・総務省「2025年経済構造実態調査」製造業事業所調査 地域別統計表(第1表・参考表)より作成(2024年の値、単位: 兆円。割合は計算値。個人経営の事業所はふくまない)

2024年の統計で、倉敷市の工業の出荷額は、岡山県全体のおよそ6割です。これは水島地区だけの値ではなく、水島地区をふくむ倉敷市全体の値です。岡山県の中に倉敷市があり、倉敷市の中に水島地区がある、という関係で読みます。

3鉄鋼と造船 福山・水島と今治・呉

鉄鋼業 水島と福山の製鉄所

鉄鋼業は、鉄をつくる工業です。戦後、水島や福山などに、大きな製鉄所が新しくできました。

福山は、広島県の南東部にある市です。大きな製鉄所ができて、瀬戸内工業地域の大事な拠点になりました。福山は岡山県ではなく広島県の市なので、地図では県の場所もいっしょに確かめます。

造船業 今治と呉

造船業は、船をつくる工業です。瀬戸内は昔から漁業がさかんで港町が多いので、造船業に特色があります。

愛媛県の北部にある今治には、船をつくる工場が集まっていて、外国に輸出する船もたくさんつくっています。広島県の南西部にある呉は、もとは海軍の港(軍港)でした。戦後は、海軍の工場の跡などに、造船などの大きな会社が進出しました。

順位(2024年)

都道府県

船をつくる工業の出荷額

全国にしめる割合

1位

広島県

5,004億円

20.1%

2位

長崎県

4,115億円

16.5%

3位

愛媛県

3,442億円

13.8%

4位

香川県

1,777億円

7.1%

5位

山口県

1,319億円

5.3%

出典: 経済産業省・総務省「2025年経済構造実態調査」製造業事業所調査 地域別統計表 第6表(船舶製造・修理業)・産業別統計表 第1表(全国)より作成(2024年の値、単位: 億円。割合は全国計 2.50兆円に対する割合で、計算値)

2024年の統計で、船をつくる工業の出荷額は広島県が全国1位、愛媛県が3位です。岡山県もふくめた瀬戸内の5つの県を合わせると、全国のおよそ半分(49.3%)になります。鉄鋼は水島や福山、造船は今治や呉と、工業と都市を組にして問われます。

統計で見る瀬戸内工業地域 化学の割合が大きい

全国のおよそ1割

2024年の統計で、瀬戸内工業地域(5県)の製造品出荷額は約37.7兆円で、全国(381.7兆円)のおよそ1割(9.9%)です。岡山・広島・山口の3県だけで数えると、全国の7.5%になります。何県を入れて数えるかで値が変わるので、範囲とセットで見ます。

グラフの見分け方は「化学の割合」

工業地帯・地域の帯グラフで瀬戸内を見分けるポイントは、化学です。

工業地帯・地域(2024年)

金属

機械

化学

食料品

繊維

その他

瀬戸内工業地域

21.2%

34.4%

21.5%

7.6%

2.1%

13.2%

中京工業地帯

9.8%

69.8%

6.6%

4.6%

0.6%

8.6%

阪神工業地帯

21.8%

36.4%

17.6%

11.3%

1.1%

11.8%

京浜工業地帯

9.7%

48.1%

17.0%

11.8%

0.6%

12.8%

出典: 経済産業省・総務省「2025年経済構造実態調査」(2024年の値)より作成。化学には石油・石炭製品、食料品には飲料・たばこ・飼料をふくむ。中京は愛知・三重、阪神は大阪・兵庫、京浜は東京・神奈川、瀬戸内は岡山・広島・山口・香川・愛媛の合計(単位: %。製造品出荷額にしめる割合で、計算値)。

2024年の統計で、瀬戸内工業地域は機械がおよそ3分の1(34.4%)、化学と金属がそれぞれおよそ2割です。化学の割合は21.5%で、中京(6.6%)・阪神(17.6%)・京浜(17.0%)の三大工業地帯より大きくなっています。三大工業地帯とくらべて化学の割合が大きい。これが瀬戸内の見分け方です。

ただし、この化学には石油製品や石炭製品もふくまれています。石油製品をのぞいた化学工業だけで見ると、瀬戸内(12.2%)と阪神(12.3%)はほぼ同じです。グラフを見るときは、下の注記で「何をふくむか」も確かめます。なお、千葉県の京葉工業地域は、化学の割合がさらに大きい工業地域です。

教科書のグラフは年が古いので、数字が少しちがうことがあります。見るのは、どの業種の割合が大きいかという傾向です。

新しい動き

今は、アジアの各地でも石油化学コンビナートがつくられ、日本の国内では石油化学製品の需要が減ってきています。そこで瀬戸内では、炭素繊維や医薬品、蓄電池など、新しい製品の開発や生産に取り組んでいます。

まとめ 広い土地と船の便利さから工業地域へ

瀬戸内工業地域は、次のように一本の線でつなげられます。

雨が少なく遠浅の瀬戸内海の沿岸に、江戸時代から塩田がつくられる → 1970年代に塩田が姿を消し、跡地が工場の土地に。戦後は浅い海の埋め立ても進む → 原油や鉄鉱石を船で輸入し、重い製品を輸出するのに便利な臨海部に工場が集まる → 石油化学コンビナート(岩国・大竹、周南、倉敷市の水島地区)と、鉄鋼(水島・福山)・造船(今治・呉)の町ができる → 2024年の統計で、三大工業地帯とくらべて化学(石油製品をふくむ)の割合が大きい

工業が海ぞいに集まった理由は、広い土地が使えたことと、船で運ぶのに便利だったことの2つです。統計の割合は、何年の統計か、何をふくむかといっしょに覚えましょう。

まとめの表

場所

何があるか

押さえること

瀬戸内海の沿岸(岡山・広島・山口。香川・愛媛を含めることもある)

瀬戸内工業地域

太平洋ベルトの一部。2024年の統計で出荷額は全国のおよそ1割。三大工業地帯より化学(石油製品をふくむ)の割合が大きい

坂出(香川県の北部)

塩田の跡地・埋め立て地の大工場

江戸時代に塩田が開かれ、塩の町として栄えた。今は造船や化学などの大工場が立つ

岩国(山口県)・大竹(広島県)

石油化学コンビナート

2つの市にまたがる。日本の石油化学コンビナートはここから始まった

周南(山口県の南東部)

石油化学コンビナート

もとの徳山市など。大きな船が入る港がある

倉敷市の水島地区(倉敷市の南部、高梁川の河口の海ぞい)

石油化学コンビナート・製鉄所・自動車工場

岡山県が港と埋め立て地をつくって工場を集めた。2024年の統計で、倉敷市全体の出荷額は岡山県のおよそ6割

福山(広島県の南東部)

製鉄所

大きな製鉄所ができて、瀬戸内工業地域の大事な拠点になった

今治(愛媛県の北部)

造船

外国に輸出する船も多くつくる

呉(広島県の南西部)

造船

もとは海軍の港(軍港)。戦後、海軍の工場の跡などに造船などの大きな会社が進出

用語のまとめ

用語

種類

意味

瀬戸内工業地域

工業地域

瀬戸内海の沿岸に広がる工業地域。岡山・広島・山口の3県に、香川・愛媛を含めることもある

塩田

場所

海水から塩をとるために、砂浜などにつくった場所。瀬戸内では1970年代に姿を消した

遠浅

海岸のようす

浅い海が沖まで続いていること

埋め立て地

土地

浅い海などを埋め立ててつくった土地。瀬戸内では重化学工業の工場が集まった

海運

運び方

海で、船を使って原料や製品を運ぶこと

臨海部

地域

海に面した地域。原料や製品を運ぶのに有利なので、工場が集まりやすい

加工貿易

貿易のしかた

原料を輸入し、製品にして輸出すること

石油化学コンビナート

工場の集まり

石油を精製する工場を中心に、化学などの工場がパイプで結びついて集まったもの

鉄鋼業

工業

鉄をつくる工業。瀬戸内では水島や福山に大きな製鉄所がある

造船業

工業

船をつくる工業。瀬戸内では今治や呉など

よくある間違い

2024年の統計で、岡山県の工業の出荷額のおよそ6割をしめるのは、水島地区をふくむ倉敷市全体です。 水島地区は倉敷市の南部にある工業地域で、統計の値は市全体のものです。

塩田の跡地に大工場が立った例は、香川県の坂出です。 水島地区は、岡山県が大きなタンカーの入れる港と埋め立て地をつくって、工場を集めた工業地域です。

2024年の統計で、瀬戸内工業地域の化学の割合が大きいのは、石油製品や石炭製品をふくめた値です。 化学工業だけで見ると、阪神工業地帯とほぼ同じ割合です。

瀬戸内工業地域の出荷額は、2024年の統計で全国のおよそ1割です。 何県を入れて数えるかで値が変わるので、割合と範囲をセットで覚えます。

福山は広島県の南東部の市です。 水島のある倉敷市は岡山県なので、2つの製鉄所の町は別の県にあります。

コンビナートは、工場がパイプで結びついて集まったものです。 大きな工場1つ1つのことではありません。

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塩田の跡地や水島地区をざっと見たいときはアニメーション編を、統計の読み方までくわしく知りたいときは詳細解説編の動画を見てください(動画は準備中です)。

重要語句 石油化学コンビナート、倉敷市水島地区、造船、塩田跡地

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