解説
大阪と神戸は、近畿地方の大阪湾のまわりにある大きな都市です。江戸時代から続く商業の町と、そのまわりに広がった住宅地。山と海にはさまれた神戸の埋め立て。そして大阪湾ぞいの阪神工業地帯と中小企業。この3つが、この単元の中心です。
大阪と神戸の位置 大阪湾に面した2つの都市
大阪湾は、瀬戸内海の東のはし、大阪と淡路島の間にある湾です。この湾に面して、大阪府の大阪市と、兵庫県の神戸市があります。神戸の町の後ろ(北側)には、東西にのびる六甲山地があります。
京都・大阪・神戸の3つの市をまとめて、京阪神とよびます。この回は、そのうち大阪と神戸を中心に見ていきます。京都の町なみは、次の単元であつかいます。
1天下の台所と京阪神大都市圏 卸売業・私鉄・ニュータウン
江戸時代の大阪は「天下の台所」
歴史で習ったように、江戸時代の大阪(大坂)には、多くの大名の蔵屋敷が集まっていました。全国の米や特産物が集まって取り引きされる中心地だったので、大阪は天下の台所とよばれました。天下の台所は、江戸時代の大阪のよび名です。
今の大阪は卸売業がさかん
卸売業は、つくった会社(メーカー)から商品を仕入れて、お店(小売業)などに売る仕事です。つくる会社とお店の間に入る仕事で、問屋ともいいます。
今の大阪は、この卸売業がさかんです。江戸時代から続く問屋の伝統が、今の大阪の卸売業を支えています。
順位(2020年) | 都道府県 | 卸売業の年間商品販売額 | 全国にしめる割合 |
|---|---|---|---|
1位 | 東京都 | 160.9兆円 | 40.1% |
2位 | 大阪府 | 46.1兆円 | 11.5% |
3位 | 愛知県 | 32.2兆円 | — |
出典: 総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」卸売業,小売業に関する集計(2020年の値、単位: 兆円。割合は全国計 401.6兆円に対する割合で、計算値)
2020年の統計で、大阪府の卸売業の販売額は東京都に次いで2位です。江戸時代は天下の台所、今は卸売業がさかん、と時代を分けて覚えます。
私鉄が広げた京阪神大都市圏
京都・大阪・神戸の3つの市を中心に広がる都市のまとまりを、京阪神大都市圏といいます。
都市がここまで広がったのは、私鉄(民間の鉄道の会社)が線路ぞいに住宅地をつくったからです。大阪の郊外には、大阪に通う人が住む町が育ちました。家や町は鉄道にそって広がり、京都や神戸の町ともつながっていきました。
そのため大阪市には、まわりの市から通勤や通学で人が集まります。2020年の国勢調査で、大阪市の昼夜間人口比率は132.5です。昼の人口が、夜の人口の約1.3倍あるということです。
出典: 大阪府統計年鑑(令和7年版)第3章 人口(もとは総務省統計局「国勢調査」。2020年の値。昼夜間人口比率=夜の人口を100としたときの昼の人口)
千里ニュータウン 大阪市の北の丘陵につくられた住宅地
1960年代、大阪市の近くに人口が集中しました。そこで大阪府は、大阪市の北にある千里丘陵を開発して、大規模な千里ニュータウンをつくりました。堺市の南部には、泉北ニュータウンもつくられました。
ニュータウンは、大都市の郊外に、計画的につくられた大規模な住宅地です。千里ニュータウンは大阪市の北にあるので、地図の上では北側をさがします。
千里ニュータウンは、1962年にまちびらきをしました。年月がたつと、人口の減少や高齢化、住宅の古さが課題になりました。そこで建て替えなどの再生に取り組み、今は人口がふえるなど、まちが元気を取りもどしつつあります。
2神戸の埋立地 六甲山地の土砂でつくったポートアイランド
山と海にはさまれた、せまい平地
神戸は、大阪湾に面していて、町の後ろに六甲山地があります。町があるのは、山と海の間の、海ぞいのせまい平地です。そのため神戸は、長いあいだ町を広げにくい場所でした。
山をけずって、海を埋め立てる
そこで神戸では、六甲山地の山をけずり、その土砂で海を埋め立てました。土をとった山の跡地は住宅地になり、海の上には埋立地ができました。山の跡地は住宅地、海の上は埋立地、とセットで覚えます。
こうしてできた人工島が、ポートアイランドです。ポートアイランドは神戸の港の沖にあり、1966年から埋め立てを始めて、1981年に完成しました。島には、高い住宅やコンテナの港があります。
人工島は、海を埋め立ててつくった島のことです。ポートアイランドは神戸の人工島で、大阪の人工島(夢洲など)とは別の場所にあります。テストでは、どちらの都市の人工島かがよくねらわれます。
3阪神工業地帯と中小企業 臨海部の工業から再開発へ
阪神工業地帯の歩み
阪神工業地帯は、大阪と神戸を中心に、大阪湾ぞいに広がる工業地帯です。統計で数えるときは、大阪府と兵庫県を合わせて数えます。
阪神工業地帯は、天下の台所の商業でたくわえたお金などをもとに発達し、戦争の前は日本一の工業地帯でした。その後、1940年ごろに京浜工業地帯に抜かれました。
今の順位は、新しい統計で確かめます。
順位(2024年) | 工業地帯・地域 | 製造品出荷額 | 全国にしめる割合 |
|---|---|---|---|
1位 | 中京工業地帯 | 72.3兆円 | 19.0% |
2位 | 阪神工業地帯 | 39.3兆円 | 10.3% |
3位 | 瀬戸内工業地域 | 37.7兆円 | 9.9% |
4位 | 北関東工業地域(関東内陸工業地域) | 35.5兆円 | 9.3% |
5位 | 京浜工業地帯 | 28.1兆円 | 7.4% |
出典: 経済産業省・総務省「2025年経済構造実態調査」(2024年の値)より作成(単位: 兆円。割合は全国計 381.7兆円に対する割合で、計算値)。中京は愛知・三重、阪神は大阪・兵庫、瀬戸内は岡山・広島・山口・香川・愛媛、北関東は栃木・群馬・埼玉、京浜は東京・神奈川の合計。
2024年の統計で、阪神工業地帯の出荷額は、中京工業地帯に次いで2位です。ただし3位の瀬戸内工業地域との差は小さいので、順位は何年の統計かとセットで答えます。
グラフの見分け方は「金属の割合」
工業地帯の帯グラフで阪神を見分けるポイントは、金属です。
工業地帯(2024年) | 金属 | 機械 | 化学 | 食料品 | 繊維 | その他 |
|---|---|---|---|---|---|---|
阪神工業地帯 | 21.8% | 36.4% | 17.6% | 11.3% | 1.1% | 11.8% |
中京工業地帯 | 9.8% | 69.8% | 6.6% | 4.6% | 0.6% | 8.6% |
京浜工業地帯 | 9.7% | 48.1% | 17.0% | 11.8% | 0.6% | 12.8% |
出典: 経済産業省・総務省「2025年経済構造実態調査」(2024年の値)より作成。化学には石油・石炭製品、食料品には飲料・たばこ・飼料をふくむ。中京は愛知・三重、阪神は大阪・兵庫、京浜は東京・神奈川の合計(単位: %。製造品出荷額にしめる割合で、計算値)。
2024年の統計で、阪神工業地帯の金属の割合は21.8%で、中京(9.8%)や京浜(9.7%)の約2倍です。中京や京浜にくらべて、金属の割合が高い。これが阪神の見分け方です。
ただし、阪神工業地帯でもいちばん割合が大きいのは機械(36.4%)です。「金属がいちばん」ではなく「金属の割合が高い」と言います。自動車などの輸送用機械は、出荷額全体の8.4%で、中京(51.7%)ほど大きくありません。機械が極端に多いのが中京、金属が多めなのが阪神です。
教科書のグラフは年が古いので、数字が少しちがうことがあります。見るのは、どの業種の割合が高いかという傾向です。
臨海部のコンビナートと公害
臨海部は、海ぞいの地域のことです。戦後、大阪湾の臨海部を埋め立てて、工業用の土地がつくられました。そこに、鉄鋼や石油化学などの大きな工場が、たがいに結びついて集まったコンビナートができました。
神戸や尼崎から堺にかけての海ぞいが、阪神工業地帯の中心です。大阪湾ぞいの製鉄所や石油化学コンビナートでつくられる、金属や化学の製品の割合が高くなっています。
工業がさかんになると、公害が起きました。そのひとつが地盤沈下で、地下水のくみ上げすぎで地面が下がることです。大気汚染や水のよごれも起き、こうした公害をなくす努力が続けられてきました。
中小企業が集まる東大阪市
阪神工業地帯は、中小企業が多く集まっているのが特色です。中小企業は、工業(製造業)では、資本金が3億円以下か、働く人が300人以下の会社をいいます。
中小企業が特に多いのが、大阪市のとなりの東大阪市です。東大阪市は、海に面していない内陸部の市で、金属や機械の中小規模の工場が多く集まっています。中には、高い技術をもつ会社もあります。海ぞいの臨海部には大きな工場、内陸部の東大阪市などには中小規模の工場、という対で覚えます。
項目(2025年6月1日) | 値 |
|---|---|
大阪府の製造業の事業所の数 | 17,995(全国1位。2位は愛知県の17,695) |
そのうち働く人が300人未満の事業所 | 99.2% |
そのうち働く人が1〜9人の事業所 | 53.1% |
東大阪市の製造業の事業所の数 | 2,430 |
そのうち働く人が29人以下の事業所 | 86.3% |
出典: 経済産業省・総務省「2025年経済構造実態調査 製造業事業所調査」地域別統計表(2025年6月1日現在、単位: 事業所。割合は事業所の数に対する割合で、計算値。個人経営の事業所はふくまない)
2025年の統計で、大阪府は製造業の工場(事業所)の数が全国でいちばん多く、その99%は働く人が300人より少ない工場です。半分以上は、働く人が9人以下の工場です。この数は会社の数ではなく、工場の数です。99%は「働く人が300人より少ない工場の割合」と読みます。
臨海部の再開発
再開発は、古くなった地区や、工場などの跡地を、計画的につくり直すことです。
大阪湾ぞいでは、工場の跡地にテーマパークのユニバーサル・スタジオ・ジャパンが2001年に開園し、工業からの転換が進んでいます。埋め立てでできた人工島の夢洲には、コンテナの物流の拠点や太陽光発電所があり、2025年の大阪・関西万博の会場になりました。
今の大阪湾の臨海部には、太陽光発電のパネルや蓄電池の工場、大型の物流施設、テーマパークなどが集まっています。工場の屋根に太陽光発電を置いたり、工業用水をくり返し使ったりして、環境に配慮した取り組みも進んでいます。
まとめ 商業の町から大都市圏と工業地帯へ
大阪・神戸は、次のように一本の線でつなげられます。
江戸時代の大阪は天下の台所 → 今の大阪は卸売業がさかん(2020年の統計で全国2位)→ 私鉄の線路ぞいや千里ニュータウンに住宅地が広がり、京阪神大都市圏になる → 神戸では六甲山地の土砂で海を埋め立て、ポートアイランドをつくる → 阪神工業地帯は戦前は日本一、1940年ごろ京浜に抜かれ、2024年の統計では中京に次いで2位 → 臨海部は埋め立て → コンビナート → 公害 → 再開発と移り変わる
阪神工業地帯は、2024年の統計で中京や京浜にくらべて金属の割合が高く、東大阪市などに中小企業が多く集まっています。順位と割合は、何年の統計かといっしょに覚えましょう。
まとめの表
場所 | 何があるか | 押さえること |
|---|---|---|
大阪(大阪湾に面する大阪府の中心) | 卸売業・京阪神大都市圏 | 江戸時代は天下の台所。今は卸売業がさかん(2020年の統計で東京都に次いで2位)。私鉄の線路ぞいに住宅地が広がった |
千里ニュータウン(大阪市の北の丘陵) | ニュータウン | 1960年代に大阪府が開発。1962年まちびらき。高齢化や住宅の古さが課題になり、建て替えなどで再生 |
神戸(大阪湾に面し、後ろに六甲山地) | 埋立地・ポートアイランド | 山と海の間で平地がせまい。六甲山地の土砂で海を埋め立て、跡地は住宅地に。ポートアイランドは神戸の人工島 |
大阪湾ぞいの臨海部(神戸・尼崎から堺) | 阪神工業地帯の中心・コンビナート | 2024年の統計で出荷額は中京に次いで2位。中京・京浜より金属の割合が高い。公害(地盤沈下・大気汚染)のあと、再開発が進む |
東大阪市(大阪市のとなりの内陸部) | 中小企業の工場 | 金属や機械の中小規模の工場が多い。高い技術をもつ会社もある |
用語のまとめ
用語 | 種類 | 意味 |
|---|---|---|
天下の台所 | よび名 | 江戸時代の大阪のよび名。全国の米や特産物が集まって取り引きされる中心地だった |
卸売業(問屋) | 仕事 | つくった会社から商品を仕入れて、お店などに売る仕事 |
京阪神大都市圏 | 都市のまとまり | 京都・大阪・神戸の3つの市を中心に広がる都市のまとまり |
ニュータウン | 住宅地 | 大都市の郊外に、計画的につくられた大規模な住宅地。大阪では千里ニュータウン(大阪市の北)など |
埋立地 | 土地 | 海などを埋め立ててつくった土地。神戸では六甲山地の土砂を使った |
ポートアイランド | 人工島 | 神戸の港の沖に、海を埋め立ててつくった人工島。1981年完成 |
阪神工業地帯 | 工業地帯 | 大阪と神戸を中心に、大阪湾ぞいに広がる工業地帯。統計では大阪府と兵庫県の合計 |
コンビナート | 工場の集まり | 鉄鋼や石油化学などの大きな工場が、たがいに結びついて集まったもの |
地盤沈下 | 公害 | 地下水のくみ上げすぎで、地面が下がること |
中小企業 | 会社 | 工業(製造業)では、資本金が3億円以下か、働く人が300人以下の会社 |
再開発 | まちづくり | 古くなった地区や、工場などの跡地を、計画的につくり直すこと |
よくある間違い
天下の台所は、江戸時代の大阪のよび名です。 今の大阪の話をするときは、「卸売業がさかん」と言います。時代を分けて答えます。
2024年の統計で、阪神工業地帯の製造品出荷額は、中京工業地帯に次いで2位です。 3位の瀬戸内工業地域との差は小さいので、順位は何年の統計かとセットで答えます。
2024年の統計で、阪神工業地帯は、中京や京浜にくらべて金属の割合が高い工業地帯です。 阪神でも、いちばん割合が大きいのは機械です。自動車などの輸送用機械が多いのは中京です。
ポートアイランドは、神戸の港の沖にある人工島です。 六甲山地をけずった土砂で埋め立ててつくりました。大阪の湾岸の人工島は夢洲などです。
千里ニュータウンは、大阪市の北にあります。 堺市の南部にあるのは泉北ニュータウンです。
コンビナートは、大きな工場が、たがいに結びついて集まったものです。 大きな工場1つ1つのことではありません。
2025年の統計で、大阪府の工場の99%は、働く人が300人未満の工場です。 これは工場(事業所)の数の割合で、会社の数ではありません。
プリントと動画で確認しよう
このテーマの単語テストと問題集は、下のボタンからダウンロードできます。どちらも答えと解説がついています。
天下の台所やポートアイランドをざっと見たいときはアニメーション編を、工業地帯のグラフの見分け方や統計の読み方までくわしく知りたいときは詳細解説編の動画を見てください(動画は準備中です)。
重要語句 天下の台所、ニュータウン、ポートアイランド、阪神工業地帯