中学社会・地理・日本のさまざまな地域・No.80

中央高地の産業 ― 果樹・高原野菜・精密機械

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解説

中央高地は、中部地方のまん中にある、山の多い地域です。盆地の扇状地で育てる果樹、標高の高い高原でつくる高原野菜、そして諏訪湖のまわりの精密機械工業。この3つが、この単元の中心です。

中央高地の位置 山の間に盆地がならぶ

中央高地は、本州のまん中にある、山の多い地域です。長野県と山梨県、それから岐阜県の北部の飛騨地方の山の地域をまとめてそうよびます。長野県と山梨県だけではないので、範囲に気をつけます。

山と山の間には、盆地がならんでいます。盆地は、まわりを山に囲まれた平らな土地のことです。中央高地では、この盆地がその地方の中心になっていて、人や産業が集まっています。

この単元で出てくる盆地は、山梨県のまん中の甲府盆地、長野県の北部の長野盆地、長野県の中西部の松本盆地、そして長野県のまん中にある諏訪湖のまわりの諏訪盆地です。

1扇状地と果樹 甲府盆地のぶどう・もも、長野盆地のりんご

扇状地は水はけがよい

まわりの山から流れてくる川は、山のふもと、つまり盆地のふちに扇状地をつくります。

扇状地は、川が山から平地に出る所に、上流から運ばれてきた砂や小石が積もってできた、扇の形の土地です。日本では、甲府や松本などの盆地のふちによく見られます。

扇状地の土は、水はけがよいのが特徴です。砂や小石が積もった土なので、水がしみこみやすく、川の水も扇状地の上では地下にしみこんでしまうことがあります。そのため、水をためておく田には向かず、桑畑や果樹園に使われてきました。一方、盆地の底の低い所では、田で米づくりが行われてきました。

水がたまる所は田、水がしみこむ所は果樹園。「扇状地は水はけがよいので果樹園に使われる」は、記述問題でもよく聞かれます。

甲府盆地のぶどうともも

甲府盆地は、山梨県のまん中、甲府市を中心とする盆地です。ぶどうとももの産地で、とくに盆地の東部でさかんです。

甲府盆地は内陸の気候で、東京とくらべると雨が比較的少なく、晴れの日が多いところです。夏は気温が高く、冬は低くなります。この気候も、果樹づくりに合っているとされています。

地点(1991〜2020年の平年値)

8月の平均気温

1月の平均気温

年降水量

甲府

27.1℃

3.1℃

1160.7mm

東京

26.9℃

—

1598.2mm

出典: 気象庁「過去の気象データ検索」平年値(統計期間 1991〜2020年、単位: ℃・mm)

甲府の年降水量は、東京より400mmあまり少なくなっています。8月と1月の平均気温の差は、24℃ほどあります。

順位(2024年)

都道府県

ぶどうの収穫量

全国にしめる割合

1位

山梨県

43,600t

26.5%

2位

長野県

32,100t

19.5%

3位

岡山県

14,300t

—

出典: 農林水産省「作物統計調査」令和6年産 果樹 ぶどう(2024年の値・確定値、単位: t〔トン〕。割合は全国計 164,600t に対する割合で、計算値)

順位(2024年)

都道府県

ももの収穫量

全国にしめる割合

1位

山梨県

31,500t

28.7%

2位

福島県

29,100t

26.5%

3位

長野県

11,400t

10.4%

出典: 農林水産省「作物統計調査」令和6年産 果樹 もも(2024年の値・確定値、単位: t〔トン〕。割合は全国計 109,700t に対する割合で、計算値)

2024年の統計で、ぶどうは山梨県が全国1位、長野県が2位です。ももも、2024年の統計で山梨県が全国1位です。ただ、ももは2位の福島県との差が小さいので、順位を答えるときは何年の統計かを必ず確かめます。

勝沼のワインと観光農園

甲府盆地の東部にある勝沼は、今の甲州市にあり、古くからぶどうの産地として知られています。ぶどうから、ワインもたくさんつくられています。

甲府盆地には、観光のぶどう園もあります。観光農園は、お客さんに収穫を体験してもらい、とれたものを売る農園のことです。関東・中部・近畿を結ぶ中央自動車道が開通したのにともなって、観光客もふえてきました。

桑畑から果樹園へ

甲府盆地の扇状地では、明治のころから養蚕がさかんでした。養蚕は、蚕を飼って繭をとることです。蚕は桑の葉を食べて育ち、繭をつくります。その繭から、生糸がとれます。だから扇状地には、蚕のえさになる桑の畑が広がっていました。

第二次世界大戦の後、化学繊維が広まったことなどで、養蚕はおとろえていきました。養蚕がおとろえるとともに、ぶどうやももの果樹園がふえていきました。桑畑から果樹園へ、扇状地の使い方が変わったわけです。

長野盆地のりんご

長野盆地は、長野県の北部、長野市を中心とする盆地です。善光寺平という呼び名もあります。千曲川が流れ、扇状地がよく発達しています。その扇状地などで、りんごやぶどう、ももの栽培がさかんです。

順位(2024年)

都道府県

りんごの収穫量

全国にしめる割合

1位

青森県

370,500t

60.8%

2位

長野県

106,400t

17.5%

3位

岩手県

36,700t

—

出典: 農林水産省「作物統計調査」令和6年産 果樹 りんご(2024年の値・確定値、単位: t〔トン〕。割合は全国計 609,200t に対する割合で、計算値)

2024年の統計で、りんごの収穫量は青森県が1位、長野県が2位です。長野のりんごは有名ですが、1位は青森県なので、ここが引っかけになります。山梨はぶどうともも、長野はりんご。県と果物の組み合わせで覚えます。

2高原野菜 夏の涼しさを使って夏に出荷するレタス・キャベツ

高原野菜とは

高原野菜は、標高の高い高原で、夏の涼しい気候を使って育てる、レタスやキャベツなどの野菜です。高冷地野菜という言い方もあります。標高1000メートル前後の高原でつくられることが多い野菜です。

つくられている場所は、長野県の東部の高原です。八ヶ岳は、長野県の東部から山梨県の北部にまたがる山々です。その東のふもとに広がる高原が野辺山原で、第二次世界大戦の後に開拓され、高原野菜づくりが成功しました。ほかにも、千曲川のいちばん上流にある川上村や、菅平などの高原でつくられています。

野辺山の夏の涼しさ

地点(1991〜2020年の平年値)

8月の平均気温

年平均気温

野辺山(長野県・標高1350m)

19.5℃

7.2℃

東京

26.9℃

15.8℃

出典: 気象庁「過去の気象データ検索」平年値(統計期間 1991〜2020年、単位: ℃)

野辺山の8月の平均気温は19.5℃で、東京の26.9℃より7℃ほど低くなっています。

平地では、真夏は暑すぎてレタスなどが作りにくくなります。高原なら、夏の涼しさを使ってレタスなどを育てられます。だから、ほかの産地で作りにくい夏に出荷できるのです。とれた野菜は、トラックで大都市へ運ばれます。

「涼しい気候を生かして、夏に出荷する」は、記述問題でそのまま問われる形です。

レタスは長野県が1位

順位(2024年)

都道府県

レタスの収穫量(1年分)

全国にしめる割合

1位

長野県

178,000t

33.3%

2位

茨城県

87,300t

16.3%

3位

群馬県

58,700t

11.0%

出典: 農林水産省「作物統計調査」令和6年産 野菜 レタス 計(2024年の値・確定値、単位: t〔トン〕。割合は全国計 534,300t に対する割合で、計算値)

順位(2024年)

都道府県

夏から秋にとれるレタスの収穫量

全国にしめる割合

1位

長野県

160,600t

62.5%

2位

群馬県

43,300t

16.8%

3位

茨城県

17,800t

6.9%

出典: 農林水産省「作物統計調査」令和6年産 野菜 レタス 夏秋(2024年の値・確定値、単位: t〔トン〕。割合は全国計 257,000t に対する割合で、計算値)

2024年の統計で、レタスの収穫量は長野県が全国1位です。とくに夏から秋にとれるレタスでは、全国の6割以上が長野県産です。市町村で見ると、夏から秋にとれるレタスの収穫量は、2024年の統計で川上村がいちばん多くなっています。

キャベツは群馬県が1位

順位(2024年)

都道府県

キャベツの収穫量(1年分)

全国にしめる割合

1位

群馬県

271,700t

21.0%

2位

愛知県

221,500t

17.1%

3位

千葉県

101,800t

—

出典: 農林水産省「作物統計調査」令和6年産 野菜 キャベツ 計(2024年の値・確定値、単位: t〔トン〕。割合は全国計 1,294,000t に対する割合で、計算値)

順位(2024年)

都道府県

夏から秋にとれるキャベツの収穫量

全国にしめる割合

1位

群馬県

253,700t

54.4%

2位

長野県

55,600t

11.9%

3位

北海道

42,800t

9.2%

出典: 農林水産省「作物統計調査」令和6年産 野菜 キャベツ 夏秋(2024年の値・確定値、単位: t〔トン〕。割合は全国計 466,400t に対する割合で、計算値)

キャベツの全国1位は、2024年の統計で群馬県です。長野県は、夏から秋にとれるキャベツで、群馬県に次いで2位です。長野はレタスで1位、キャベツの1位は群馬。この2つは取り違えやすいので、区別して覚えます。

言葉の確認 抑制栽培と促成栽培

ふつうより収穫や出荷の時期を遅らせる作り方を、抑制栽培といいます。反対に、時期を早める作り方は促成栽培です。どちらも、日本の農業の単元でくわしく出てくる言葉です。

3諏訪湖のまわりの工業 製糸業から精密機械工業、電子工業へ

製糸業で栄えた諏訪湖のまわり

諏訪湖は、長野県のまん中にある湖で、そのまわりが諏訪盆地です。ここでは、第二次世界大戦の前に製糸業が栄えました。製糸業は、繭から生糸をつくる工業です。養蚕でとれる繭を、糸にする工業です。

明治のはじめに、諏訪湖の北西の岸にある岡谷に、西洋式の製糸工場が入りました。そこから諏訪湖のまわりは、岡谷を中心に、昭和のはじめまで全国一の製糸業の地域になりました。

精密機械工業と「東洋のスイス」

その後、製糸業はおとろえていきます。そのあと、第二次世界大戦中によそから移ってきた工場をもとにして、精密機械工業が発達しました。製糸から精密機械に切りかえた工場も多くありました。

精密機械は、時計やカメラ、顕微鏡のように、とても細かく正確につくる必要がある機械です。諏訪湖のまわりは、海から遠い内陸の工業地域として発展し、「東洋のスイス」とよばれるようになりました。

電子工業へ、工場は八ヶ岳のふもとや松本盆地へも

その後、電子工業もさかんになっていきます。電子工業は、電気機械の工業のうち、通信機器やコンピューターなどの電子機器をつくる分野です。教科書によっては、電気機械工業という言い方で出てきます。

今は、高速道路に近い所で、電気機械の工業がさかんです。また、工場は諏訪湖のまわりから、八ヶ岳のふもとや松本盆地などにも広がっていきました。

製糸業、精密機械工業、電子工業という移り変わりは、「製糸業」「精密機械工業」「電気機械工業」の3つの言葉を使って説明する形で問われます。

まとめ 盆地の扇状地は果樹、高原は野菜、諏訪湖のまわりは精密機械から電子へ

中央高地の産業は、次のように一本の線でつなげられます。

山の間の盆地に人や産業が集まる → 盆地のふちの扇状地は水はけがよく、桑畑や果樹園に使われてきた → 甲府盆地はぶどうともも(2024年の統計でどちらも山梨県が全国1位) → 戦後に養蚕がおとろえ、桑畑から果樹園へ → 長野盆地はりんご(2024年の統計で1位は青森県、長野県は2位) → 長野県の東部の高原では、夏の涼しい気候を使ってレタスやキャベツをつくり、ほかの産地で作りにくい夏に出荷 → 諏訪湖のまわりは、戦前の製糸業から精密機械工業、そして電子工業へ

扇状地は水はけ、高原野菜は夏の涼しさ、諏訪湖のまわりは製糸業からの移り変わり。場所と産業を、その理由といっしょに覚えましょう。

まとめの表

場所

何があるか

押さえること

盆地のふちの扇状地

桑畑・果樹園

水はけがよく、田に向かない。盆地の底の低い所は田

甲府盆地(山梨県のまん中)

ぶどう・もも・ワイン・観光農園

内陸の気候で雨が比較的少ない。2024年の統計で、ぶどうも、ももも山梨県が1位。ももは2位の福島県との差が小さい

甲府盆地の扇状地

桑畑から果樹園へ

明治のころから養蚕。戦後、化学繊維が広まったことなどで養蚕がおとろえ、果樹園がふえた

長野盆地(長野県の北部)

りんご

善光寺平ともいう。2024年の統計で、りんごは青森県が1位、長野県が2位

長野県の東部の高原(野辺山原・川上村・菅平)

高原野菜(レタス・キャベツ)

夏の涼しい気候を使い、ほかの産地で作りにくい夏に出荷。2024年の統計で、レタスは長野県が1位、キャベツは群馬県が1位

諏訪湖のまわり(長野県のまん中)

製糸業→精密機械工業→電子工業

岡谷を中心に昭和のはじめまで全国一の製糸業。戦争中に移ってきた工場をもとに精密機械工業。「東洋のスイス」

用語のまとめ

用語

種類

意味

中央高地

地域

本州のまん中にある山の多い地域。長野県・山梨県と、岐阜県の北部の飛騨地方

盆地

地形

まわりを山に囲まれた平らな土地

扇状地

地形

川が山から平地に出る所に、上流から運ばれた砂や小石が積もってできた扇の形の土地

水はけ

土の性質

水がしみこみやすいかどうか。扇状地は砂や小石が積もった土なので水はけがよい

観光農園

農園

お客さんに収穫を体験してもらい、とれたものを売る農園

養蚕

農業

蚕を飼って繭をとること。蚕は桑の葉を食べて育つ

高原野菜

作物

標高の高い高原で、夏の涼しい気候を使って育てるレタスやキャベツなどの野菜。高冷地野菜ともいう

抑制栽培

栽培の方法

ふつうより収穫や出荷の時期を遅らせる作り方

促成栽培

栽培の方法

ふつうより収穫や出荷の時期を早める作り方

製糸業

工業の種類

繭から生糸をつくる工業

精密機械工業

工業の種類

時計やカメラ、顕微鏡のように、とても細かく正確につくる必要がある機械をつくる工業

電子工業

工業の種類

電気機械の工業のうち、通信機器やコンピューターなどの電子機器をつくる分野。教科書によっては電気機械工業

よくある間違い

扇状地は水はけがよいので、田には向かず、桑畑や果樹園に使われてきました。 水がたまる所は田、水がしみこむ所は果樹園、と対にして覚えます。

中央高地は、長野県と山梨県に、岐阜県の北部の飛騨地方を加えた地域です。 山の多い地域で、山の間に盆地がならんでいます。

2024年の統計で、りんごの収穫量の1位は青森県、長野県は2位です。 長野県のりんごは有名ですが、1位ではありません。

2024年の統計で、レタスは長野県が1位、キャベツは群馬県が1位です。 長野県は、夏から秋にとれるキャベツで群馬県に次いで2位です。

ももの収穫量は、2024年の統計で山梨県が1位です。 2位の福島県との差が小さいので、何年の統計かとセットで答えます。

高原野菜は、夏の涼しい気候を使って育て、ほかの産地で作りにくい夏に出荷します。 抑制栽培は「収穫や出荷の時期を遅らせる作り方」という言葉の意味で覚えます。

諏訪湖のまわりの精密機械工業は、製糸業がおとろえたあと、第二次世界大戦中に移ってきた工場をもとに発達しました。 「東洋のスイス」は、そうして発達した地域の呼び名です。

プリントと動画で確認しよう

このテーマの単語テストと問題集は、下のボタンからダウンロードできます。どちらも答えと解説がついています。

扇状地の果樹や高原野菜、諏訪湖のまわりの工業をざっと見たいときはアニメーション編を、気候や統計の読み方までくわしく知りたいときは詳細解説編の動画を見てください(動画は準備中です)。

重要語句 甲府盆地、高原野菜、精密機械、諏訪湖

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