解説
アジア州には、2024年の国連の推計で世界の人口の約6割が住んでいます。なぜこれほど多くの人がアジアに集まっているのでしょうか。季節風がもたらす雨と農業の関係から見ていき、宗教の分布と伝わった道をたどったあと、人口の話に戻ってきます。
アジア州はどこからどこまで? 5つの地域
アジア州は、大きく5つの地域に分けられます。東アジア(中国・朝鮮半島・日本など)、東南アジア、南アジア(インドなど)、西アジア(アラビア半島の国々など)、中央アジアです。
中央アジアは、ユーラシア大陸のまん中の、海から遠い地域です。西アジアにも乾燥した地域が広がっています。反対に、季節風がふく東アジア・東南アジア・南アジアは雨が多い地域です。この「雨が多いか少ないか」の違いが、農業にも人口にも関わってきます。
1農業 季節風と稲作・畑作・遊牧(年降水量およそ1000mmが目安)
季節風(モンスーン)は、季節によって向きが変わる風です。夏は海から大陸へ、冬は大陸から海へふきます。夏の季節風は、東南アジアや南アジアなどに雨季をもたらし、この雨が米づくりに必要な水になります。
アジアの農業は、降水量(降る雨の量)によって、大きく3つに分かれます。
雨の量 | 農業 | 主な地域の例 |
|---|---|---|
雨が多い | 稲作(米) | 東アジア・東南アジア、インドの沿岸部とガンジス川の流域 |
雨がやや少ない | 畑作(小麦など) | 中国の北東部、インドの西部 |
雨がとても少ない | 遊牧 | 西アジア、モンゴル、中国の内陸部 |
雨が多い地域では稲作(米づくり)が、雨がやや少ない地域では小麦などをつくる畑作がさかんです。雨がとても少ない地域では遊牧が行われています。遊牧は、一か所に住みつかないで、水や草を求めて、羊や牛などの家畜と移動しながら飼うことです。ロシアと中国にはさまれた、海に面していない国のモンゴルでは、乾燥した気候の中で遊牧が行われてきました。
稲作と畑作の境の目安になるのが、年降水量およそ1000mmです。1年間の雨の量がそれより多い地域では稲作が、少ない地域では小麦などの畑作が中心になります。ただし、1000mmはあくまで目安で、地域によって境はずれます。
中国の南と北 チンリン山脈とホワイ川の線
中国では、まん中を東西に走るチンリン山脈と、東部を東へ流れるホワイ川を結ぶ線が、南の稲作と北の畑作の境とされてきました。線の北は雨が少なく、南は雨が多くなっています。線の南のシャンハイ(長江の河口にある、中国最大の商工業都市)と、線の北のペキン(中国の首都)を比べてみます。
地点 | 線との位置 | 年平均気温 | 年降水量 | 雨が一番多い月 |
|---|---|---|---|---|
シャンハイ | 線の南 | 17.2℃ | 1211.9mm(約1200mm) | 8月 215.5mm |
ペキン | 線の北 | 13.3℃ | 530.8mm(約530mm) | 7月 170.6mm |
出典: 気象庁「世界の天候データツール(ClimatView)」平年値(統計期間 1991〜2020年、単位: ℃・mm。年の値は月の値から計算)
シャンハイの年降水量は1000mmの目安を上回り、ペキンはだいぶ下回っています。ペキンも夏の7月には170mmほど降りますが、1年の合計で比べると、シャンハイの半分にもとどきません。雨温図の問題では、1か月の多さではなく、年の合計で比べてください。
そのため中国では、「南は米、北は麦(麺)」という言い方があります(南米北麦)。中国の北部の平野では小麦がつくられ、麺やギョーザのような小麦を使った料理が食べられてきました。インドの北部でも、チャパティやナンという薄く焼いたパンがつくられてきました。
ただ、最近は、水を引く設備が整って、線より北でも米がつくられるようになってきています。水路を引いて田畑に水を送ることを灌漑といいます。「南は米、北は小麦」は、もともとの分かれ方として覚えておくとよいでしょう。
二期作と二毛作
二期作は、同じ田で、1年に2回、同じ作物(主に米)をつくることです。台湾や中国の南部、東南アジアなどでは、二期作がふつうに行われています。熱帯では、今でも米の二期作が多く見られます。
名前の似た二毛作は、同じ田畑で、1年に2回、ちがう作物をつくることです。たとえば、米のあとに麦をつくるのが二毛作です。「二期作=同じ作物を2回」「二毛作=ちがう作物を2回」と、組にして覚えてください。
米と小麦の生産
順位 | 国 | 米(もみ)の生産量 |
|---|---|---|
1位 | インド | 約2億1787万t(世界の26.6%) |
2位 | 中国 | 約2億917万t |
3位 | バングラデシュ | 約6057万t |
4位 | インドネシア | 約5314万t |
5位 | ベトナム | 約4345万t |
6位 | タイ | 約3355万t |
— | アジアの合計 | 約7億3366万t(世界の89.4%) |
— | 世界 | 約8億2022万t |
出典: FAOSTAT(国連食糧農業機関)(2024年、単位: t=トン。中国は台湾・ホンコン・マカオをふくむ値。世界の割合は国別の値から計算)
2024年の統計で、世界の米の約9割がアジアでつくられています。上の表の上位6か国は、どれもアジアの国です。米は、アジアの多くの国で主食になっています。ただ、インドと中国の順位は年によって入れかわることがあります。統計の問題では、何年の統計かを先に確かめてください。
小麦も、2024年の統計で、中国(約1億4010万t)が1位、インド(約1億1329万t)が2位です(中国は台湾などをふくまない値)。ただ、小麦はロシア(3位)やアメリカ(4位)などアジア以外の国でも多くつくられていて、アジアの合計は世界の46.6%と、半分ほどです(FAOSTAT、2024年、単位: t。割合は計算値)。「米は約9割、小麦は半分ほど」と比べて覚えておきましょう。
2宗教 仏教・イスラム教・ヒンドゥー教・キリスト教と伝わった道
ここで見るのは、その国や地域で一番多くの人が信じている宗教です。国の中にも、いろいろな宗教の人がいます。
仏教は、紀元前5世紀に、インドのガンジス川の中流で生まれ、アジアに広まった宗教です。中国を通って、日本にも伝わりました。今、仏教を信じる人が多いのは、中国・朝鮮半島・日本などの東アジアと、チベットやモンゴル、それにタイなどの東南アジアの大陸部の国々です。
東南アジアは、インドシナ半島の大陸部と、島々の島しょ部に分けられます。インドシナ半島は、アジアの南東部の半島で、東に南シナ海、西にベンガル湾があります。大陸部にはミャンマー・タイ・ラオス・カンボジアなどが、島しょ部にはインドネシア・マレーシア・フィリピンなどがあります。大陸部のタイでは、国民のほとんどが仏教徒です。ミャンマーやカンボジア、ラオスも仏教の国です。
イスラム教は、7世紀の初めに、西アジアのアラビア半島にあるメッカで、ムハンマドが始めた宗教です。西アジアの国々では、イスラエルなどを除いて、ほとんどの人がイスラム教徒です。
イスラム教は、西アジアから、海や陸の交易の道に沿って伝わりました。東南アジアの島々には、13世紀の終わりごろから、海の交易の道を通じて広まっていきました。そのため、島しょ部のインドネシアやマレーシアでは、イスラム教の人が多くなっています。インドネシアは、イスラム教徒の数が世界で最も多い国として知られています。マレーシアでは、イスラム教が国の宗教になっています。南アジアのパキスタンやバングラデシュも、住んでいる人の大多数がイスラム教徒です。
ヒンドゥー教は、インドの民族宗教です。2011年の国勢調査では、インドの人の約8割(79.8%)がヒンドゥー教を信仰していました(インド国勢調査、単位: %=総人口にしめる割合。宗教別の人数から計算)。ヒンドゥー教のくわしい中身は、インドの回であつかいます。
東南アジアの中でもフィリピンは、キリスト教の人が大半です。フィリピンはかつてスペインの植民地で、そのときに住んでいた人たちが、キリスト教のカトリックに改めさせられたためです。
宗教 | 生まれた所 | 信じる人が多い主な地域・国 | 伝わった道 |
|---|---|---|---|
仏教 | インド(紀元前5世紀) | 東アジア(中国・朝鮮半島・日本)、チベット・モンゴル、東南アジアの大陸部(タイなど) | インドから中国を通って日本へ |
イスラム教 | 西アジアのアラビア半島(7世紀の初め) | 西アジア(イスラエルなどを除く)、東南アジアの島しょ部(インドネシア・マレーシア)、南アジアのパキスタン・バングラデシュ | 海や陸の交易の道に沿って |
ヒンドゥー教 | インド(インドの民族宗教) | インド | — |
キリスト教 | — | 東南アジアのフィリピン | スペインの植民地だったころに広まった |
宗教の分布は、伝わった道とセットで覚えると整理しやすくなります。大陸部は仏教、島しょ部はイスラム教、フィリピンはキリスト教、と東南アジアを分けて言えるようにしておきましょう。
3人口 世界の約6割がアジア(2024年の国連の推計)
2024年の国連の推計で、世界の人口の約6割がアジアに住んでいます。
州 | 人口(2024年・推計) |
|---|---|
アジア | 約48億690万人(世界の58.9%) |
アフリカ | 約15億1514万人 |
ヨーロッパ | 約7億4508万人 |
世界 | 約81億6197万人 |
出典: 国連 World Population Prospects 2024(2024年・推計、単位: 人。割合は計算値。国連の区分の「アジア」はロシアをふくまない)
人口の多い国の順位でも、2024年の国連の推計で、インド(約14億5094万人)が1位、中国(約14億人)が2位です(中国は台湾・ホンコン・マカオをふくまない値)。
年 | アジアの人口 |
|---|---|
1950年 | 約13億6808万人 |
1975年 | 約23億8917万人 |
2000年 | 約37億4778万人 |
2024年 | 約48億690万人 |
出典: 国連 World Population Prospects 2024(1950〜2024年、単位: 人。2024年は推計)
アジアの人口は、1950年から2024年までに約3.5倍(3.51倍)に増えました。同じ期間の世界全体は約3.3倍(3.27倍)なので、アジアの増え方が大きいことがわかります(倍率は表の値から計算)。このように、人口が急に増えることを人口爆発といいます。
ただ、増え方は地域によって違います。国連の地域区分で見ると、東アジアの人口は2024年に約16億5612万人です。2050年には約14億6704万人と、2024年より減ると推計されています(国連 World Population Prospects 2024、単位: 人。国連の地域区分の値)。アジアの中でも、増え方には差があります。
では、アジアのどこに人が多く住んでいるのでしょうか。人が多いのは、季節風の影響で雨が比較的多い地域の、平野や海岸ぞいです。日本から中国の沿岸部にかけての地域、インドのガンジス川の流域と沿岸部、インドネシアのジャワ島(首都ジャカルタがある島)などで、人口密度(1km²あたりの人口)が高くなっています。
人口密度が高い地域は、稲作がさかんな地域とほぼ重なっています。アジアでは昔から田んぼで米がつくられ、その米が多くの人を養ってきたと考えられています。反対に、西アジアや中央アジアなどの乾燥した地域や、高い山の地域は人が少なくなっています。
国・地域 | 人口密度(2024年・推計) |
|---|---|
バングラデシュ | 1,333人/km² |
インド | 488人/km² |
日本 | 328人/km² |
アジア全体 | 153人/km² |
中国 | 148人/km² |
世界全体 | 63人/km² |
サウジアラビア | 16人/km² |
モンゴル | 2.2人/km² |
出典: 国連 World Population Prospects 2024(2024年・推計、単位: 人/km²=1km²あたりの人口。国の平均の値)
ガンジス川の河口にあるバングラデシュと、乾燥した内陸のモンゴルでは、人口密度に600倍ほどの差があります(計算値)。国の広さよりも、雨が多く米がとれる平野や海岸ぞいかどうかが、人の集まり方に関わっています。なお、この表は国の平均なので、同じ国の中の偏り(たとえば中国の沿岸部と内陸部)は見えません。
まとめ 雨・農業・宗教・人口をひと続きで
アジア州のようすは、次のように一本の線でつなげられます。
夏の季節風が雨をもたらす → 雨の多い地域は稲作、やや少ない地域は畑作(小麦など)、とても少ない地域は遊牧(稲作と畑作の境の目安は年降水量およそ1000mm)→ 米が多くの人を養ってきたと考えられている → 2024年の国連の推計で、世界の人口の約6割がアジアに集まる
宗教は、仏教がインドから東アジアや東南アジアの大陸部へ、イスラム教が交易の道で東南アジアの島々へ伝わり、フィリピンにはスペインの植民地の支配でキリスト教が広まりました。「どこで生まれ、どの道で伝わったか」と、農業と人口の「雨→米→人」の流れを、セットで説明できるようにしておいてください。
まとめの表
ポイント | 押さえること | 統計(何の数・調査年次・出典) |
|---|---|---|
季節風と農業 | 夏の季節風が雨をもたらす。雨が多い所は稲作、やや少ない所は畑作、とても少ない所は遊牧。稲作と畑作の境の目安は年降水量およそ1000mm | 年降水量 シャンハイ 1211.9mm・ペキン 530.8mm(1991〜2020年の平年値・気象庁) |
中国の南と北 | チンリン山脈とホワイ川の線が、南の稲作と北の畑作の境とされてきた。灌漑で北でも米がつくられるようになってきた | — |
二期作 | 同じ田で1年に2回、同じ作物(主に米)。台湾・中国の南部・東南アジア。二毛作はちがう作物を2回 | — |
米と小麦 | 米の生産はインド・中国が上位(順位は年で入れかわる)。小麦はアジア以外でも多い | 米の生産量の89.4%がアジア/小麦の生産量の46.6%がアジア(2024年・FAOSTAT) |
宗教 | 仏教=東アジア・東南アジアの大陸部など。イスラム教=西アジア(イスラエルなどを除く)・東南アジアの島しょ部など。ヒンドゥー教=インド。キリスト教=フィリピン | インドの人の79.8%がヒンドゥー教(2011年・インド国勢調査) |
人口 | 雨が多く稲作がさかんな平野や海岸ぞいに人が集まる。乾燥した地域・高い山の地域は少ない | 世界の人口の58.9%がアジア(2024年の推計・国連)/アジアの人口は1950年の3.51倍(同) |
用語のまとめ
用語 | 種類 | 意味 |
|---|---|---|
季節風(モンスーン) | 気候 | 季節によって向きが変わる風。夏は海から大陸へ、冬は大陸から海へふく。夏の季節風が雨季をもたらす |
稲作 | 農業 | 米づくり。雨の多い東アジア・東南アジア・インドの沿岸部やガンジス川の流域などでさかん |
畑作 | 農業 | 小麦などを畑でつくる農業。雨がやや少ない中国の北東部・インドの西部など |
遊牧 | 農業 | 一か所に住みつかず、水や草を求めて、羊や牛などの家畜と移動しながら飼うこと。西アジア・モンゴルなど |
年降水量およそ1000mm | 目安 | 稲作と畑作の境の目安。地域によって境はずれる |
チンリン山脈・ホワイ川 | 地形・川 | 中国のまん中を東西に走る山脈と、東部を東へ流れる川。結ぶ線が南の稲作と北の畑作の境とされてきた |
南米北麦 | 言い方 | 中国の「南は米、北は麦(麺)」という農業と食べ物の分かれ方 |
灌漑 | 農業の技術 | 水路を引いて田畑に水を送ること |
二期作 | 農業 | 同じ田で1年に2回、同じ作物(主に米)をつくること |
二毛作 | 農業 | 同じ田畑で1年に2回、ちがう作物をつくること(例: 米のあとに麦) |
仏教 | 宗教 | 紀元前5世紀にインドで生まれた。東アジア・東南アジアの大陸部(タイなど)などに信じる人が多い |
大陸部・島しょ部 | 地域 | 東南アジアの分け方。大陸部はインドシナ半島の国々(タイなど)、島しょ部は島々の国々(インドネシアなど) |
イスラム教 | 宗教 | 7世紀の初めにアラビア半島のメッカでムハンマドが始めた。交易の道に沿って東南アジアの島々などへ伝わった |
ヒンドゥー教 | 宗教 | インドの民族宗教。インドの人の約8割が信仰(2011年の国勢調査) |
キリスト教 | 宗教 | 東南アジアではフィリピンで信じる人が大半。スペインの植民地だったころに広まった |
人口爆発 | 人口 | 人口が急に増えること。アジアの人口は1950年から2024年までに約3.5倍 |
人口密度 | 人口 | 1km²あたりの人口。アジアでは稲作がさかんな平野や海岸ぞいで高い |
よくある間違い
稲作と畑作の境の年降水量およそ1000mmは、目安です。 地域によって境はずれます。中国では灌漑が整い、チンリン山脈とホワイ川の線より北でも米がつくられるようになってきています。
ペキンの年降水量は約530mm(1991〜2020年の平年値)で、1000mmの目安より少ない値です。 夏の7月には170mmほど降ります。雨温図は1年の合計で比べてください。
二期作は同じ作物を1年に2回、二毛作はちがう作物を1年に2回つくることです。 「期」は時期、「毛」は作物、と区別します。
2024年の統計では、米の生産量はインドが1位、中国が2位です。 順位は年によって入れかわることがあります。何年の統計かを確かめてから答えてください。
東南アジアの宗教は、大陸部と島しょ部で分けて覚えます。 大陸部のタイなどは仏教、島しょ部のインドネシア・マレーシアはイスラム教の人が多く、フィリピンはキリスト教の人が大半です。
2024年の国連の推計では、世界の人口の約6割がアジアに住んでいます。 古い資料では割合が小さく書かれていることがあります。人口の多い国の順位も、2024年の推計ではインドが1位、中国が2位です。
アジアで人口密度が高いのは、雨が多く稲作がさかんな平野や海岸ぞいです。 面積の広いモンゴルは、2024年の推計で人口密度が1km²あたり2.2人と、とても低い国です。
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流れをざっと確かめたいときはアニメーション編を、統計の見方までくわしく知りたいときは詳細解説編の動画を見てください(動画は準備中です)。
重要語句 稲作、二期作、畑作地域、人口の集中