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中国 ― 世界の工場と経済成長の光と影

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解説

中国は「世界の工場」とよばれ、GDPはアメリカに次ぐ世界2位(2024年の統計)です。ここまで工業をのばせたのは、なぜなのでしょうか。人口と経済の政策から理由を追いかけ、そのあとで、急な成長が生んだ課題までたどります。

中国はどこにある? アジア州の東部

中国はアジア州の東部にある国です。東と南は海に面していて、西はアジアの内陸に深く入りこんでいます。

東は海、西は内陸。この地図の上の違いは、あとで出てくる「沿岸部と内陸部の格差」の話で、もう一度大事になります。先に頭に入れておいてください。

1人口と民族 約14億人・一人っ子政策(1979年〜2015年)・漢族と55の少数民族

中国の人口は約14億人です。ただし、2024年の統計では1位がインドで、中国はインドに次ぐ世界2位です。国連の推計では、2023年にインドが中国を上回ったとされています。古い教科書や資料集では中国が1位になっていることがあるので、何年の統計かを見比べてください。

順位

国

人口

1位

インド

約14億5094万人

2位

中国

約14億人

3位

アメリカ

約3億4000万人

出典: 世界銀行 World Development Indicators(2024年、単位: 人)

しかも中国の人口は、2022年から減ってきています。中国国家統計局によると、2022年の終わりの人口は前の年の終わりより約85万人少なくなり、その後も減り続けています。2025年の終わりには約14億489万人で、1年で約339万人減りました。

人口の増え方について、中国は一人っ子政策を進めてきました。人口が急に増えるのをおさえるために、夫婦がもつ子どもを1人に制限した政策で、1979年から始まりました。2人目からは罰金を科すことがある、というきまりです。始まりを「1980年ごろから」と書く資料もあるので、年はだいたいで押さえておけば十分です。

この政策で、人口の増え方はおさえられました。そのかわり、お年寄りの割合が高くなる高齢化が進み、働く世代も減ってきました。これが深刻になったため、中国は2015年に一人っ子政策をやめ、すべての夫婦に2人目の子どもを認めます(実際に始まったのは2016年から)。2021年には、3人目まで認めました。

民族にも目を向けてみましょう。中国の人口の約9割をしめるのが漢族(漢民族)です。2020年の調査では、漢族が91.11%、それ以外の民族が8.89%でした(中国国家統計局 第7回全国人口センサス、2020年、単位: %)。

漢族のほかに、55の少数民族がくらしています。合わせて56の民族からなる、多民族国家です。少数民族は主に西部などの国境に近い地域に住んでいて、人口では1割ほどなのに、住んでいる範囲は国土の半分以上におよびます。

少数民族が多く住む地域には、少数民族の自治が認められた自治区があります。自治区は全部で5つあり、西部のチベット自治区や、北西部の新疆ウイグル自治区などがあります。

2世界の工場 改革開放(1978年)と経済特区

中国の経済が大きくのびたきっかけは、1978年から進めた改革開放という経済の政策です。外国の資金を積極的に受け入れていった政策で、その中心になったのが経済特区でした。

経済特区は、外国企業を呼びこむために、税金などを優遇した地域です。外国の資金と、中国の働く人の力で、輸出する製品をつくることがおもな目的でした。改革開放のころ、経済特区は南部の海ぞいに5か所つくられました。

経済特区

位置

シェンチェン(深圳)

南部の港町。川をはさんでホンコンと接する

チューハイ

南部。マカオのとなり

スワトウ

南部の海ぞい。南シナ海に面する

アモイ

南東部の港町。台湾海峡に面し、台湾に近い

ハイナン省

南の島(ハイナン島)の省

5か所とも南部の海ぞいで、内陸にはありません。こうした南部の経済特区では、ホンコンや台湾の資本の進出が目立ちます。

代表的なのがシェンチェンです。もとは漁村でしたが、1980年に経済特区になり、外国企業の投資を積極的に受け入れて急成長しました。今では、ペキンやシャンハイと並ぶ中国の大都市の1つです。

では、なぜ外国企業は中国に進出したのでしょうか。目当ては2つありました。1つは中国の安い労働力、もう1つは人口が多い大きな国内の市場です。約14億人の国ですから、働く人も多く、ものを買う人も多いわけです。日本をはじめとする先進国や、韓国、台湾なども、中国に進出していきました。

こうして中国は、安い製品を大量につくって、世界の各地へ輸出するようになります。これが、中国が世界の工場とよばれる理由です。ちなみに、この呼び名はもともと、19世紀に産業革命が進んだころのイギリスをさす言葉でした。

数字で確かめてみましょう。

項目

中国の値

比べる国の値

調査年次

出典

ものの輸出額

3.58兆ドル(世界1位・世界の14.5%)

アメリカ 2.06兆ドル(2位)、ドイツ 1.68兆ドル(3位)

2024年

世界銀行

製造業の生産額(付加価値)

4.85兆ドル(世界1位・世界の30.0%)

アメリカ 2.50兆ドル(2位)、日本 1.03兆ドル(3位)

2021年

世界銀行

製造業の生産額の世界にしめる割合

28.0%

(アメリカの値なし)

2024年

世界銀行

単位: 米ドル(輸出額・生産額)、%(割合)

製造業の生産額は世界の約3割で、2021年の統計では2位のアメリカの約2倍もあります。

国全体の経済の大きさを表す国内総生産(GDP)でも、中国は2010年に日本を抜きました。2024年の統計では、アメリカに次ぐ世界2位です。

項目

中国

比べる国

調査年次

GDP

6.19兆ドル

日本 5.81兆ドル

2010年

GDP

18.73兆ドル(2位)

アメリカ 29.30兆ドル(1位)、ドイツ 4.69兆ドル(3位)、日本 4.19兆ドル(4位)

2024年

1人あたりGDP

13,293ドル

世界の平均 13,717ドル、日本 33,797ドル

2024年

出典: 世界銀行 World Development Indicators(単位: 米ドル、名目)

成長の速さも見ておきます。1980年代から2000年代は、1年あたりおよそ10%の速さで経済が成長しました(世界銀行の値で1979〜2010年の平均が約10.0%)。2025年は5.0%(中国国家統計局)で、今は5%ほどに落ち着いてきています。

ただ、1人あたりのGDPにすると、2024年の統計で世界の平均くらいです。国全体では大きくても、1人あたりで見るとまだそこまで高くはありません。どちらの見方で比べているのかを、問題文から読み取ってください。

3発展の影 沿岸部と内陸部の経済格差・大気汚染

経済が成長する一方で、地域による差が大きくなりました。発展が進んだのは東の海ぞいの沿岸部(沿海部)で、おくれているのは西の、海から遠い内陸部です。

省・市

1人あたりの地域総生産

ペキン市(いちばん多い)

228,167元

シャンハイ市(2番目)

217,140元

コワントン省(シェンチェンがある省)

111,146元

カンスー省(内陸の省・いちばん少ない)

52,825元

出典: 中国国家統計局『中国統計年鑑2025』(2024年の速報値、単位: 元)

いちばん多いペキンと、いちばん少ない内陸の省では、4倍以上の差があります。ただ、内陸にも生産額の高い所はあるので、「沿岸部が高く、内陸部が低い傾向」と覚えるのが正確です。2025年の統計では、東部の10の省・市だけで、国全体の生産額の半分以上(52.1%)をしめています(中国国家統計局、単位の元から計算)。

都市と農村の間にも差があります。2025年の統計で、1人あたりの収入(可処分所得)は、都市が56,502元、農村が24,456元でした(中国国家統計局、単位: 元)。都市の人の収入は、農村の人の2倍以上です。沿岸部と内陸部、都市と農村。こうした差をまとめて経済格差といいます。

内陸の農村からは、沿岸のシャンハイやシェンチェンなどの都市へ、出稼ぎに行く人がとても多くいます。工場や建設現場などで働く人たちです。2025年の統計では、農村の出身で働く人は約3億人で、そのうち地元をはなれて働く人は約1億8000万人でした(中国国家統計局、3億115万人・1億8006万人)。

この差を縮めるために、国は2000年ごろから西部大開発を進めています。おくれている西の内陸部を開発して、沿岸部との差を縮めようとする計画で、道路や鉄道、空港などをつくってきました。それでも、2024年の統計で4倍以上の差が残っているのは、上の表のとおりです。差を縮めようとしている途中、というのが今の状態です。

もう1つの影が大気汚染です。経済の発展にともなって、中国では大都市を中心に、PM2.5などによる大気汚染が深刻になりました。PM2.5は、石炭を燃やす火力発電や自動車の排気ガスなどに含まれ、大気汚染の原因になる物質です。

中国は、石炭や石油などの化石燃料をたくさん使ってきました。2025年の統計でも、エネルギー消費の51.4%を石炭がしめています(中国国家統計局、単位: %)。その一方で、風力や太陽光の発電を大きく増やしています。2025年の発電設備は風力が約6億4001万キロワット、太陽光が約12億173万キロワットで、前の年より風力は22.9%、太陽光は35.4%増えました(中国国家統計局)。こうした風力や太陽光などのエネルギーを、再生可能エネルギーといいます。

地域

PM2.5の濃度

調査年次

中国

51.7

2013年

中国

32.0

2023年

日本

11.5

2023年

出典: 世界銀行 World Development Indicators(人口で重みをつけた年平均、単位: μg/m³)

PM2.5の濃度は、2013年ごろと比べると下がってきています。ただ、2023年の統計でも日本の約3倍あり、課題はまだ残っています。大気汚染は深刻になった、でも対策も進められている。記述問題では、この順番で書けるようにしておくと安心です。

まとめ 光と影をひと続きで

中国の発展は、次のように一本の線でつなげられます。

人口が約14億人と多い → 1978年から改革開放 → 南部の海ぞいに経済特区をつくり、外国企業を呼びこむ → 安い労働力と大きな市場を目当てに外国企業が進出 → 安い製品を大量に輸出する世界の工場に → GDPは2010年に日本を抜き、2024年の統計でアメリカに次ぐ2位

その一方で、沿岸部と内陸部の経済格差や、大気汚染という課題もかかえています。成長の理由(光)と、成長が生んだ課題(影)を、セットで説明できるようにしてください。

まとめの表

光(経済の成長)

影(課題)

きっかけ・原因

1978年からの改革開放。南部の海ぞいに経済特区をつくった

急な工業化で、地域の差が広がり、石炭などを大量に燃やした

地域

東の沿岸部(シャンハイ・シェンチェンなど)が発展

西の内陸部は発展がおくれた

人

安い労働力・大きな国内の市場

内陸の農村から沿岸の都市へ出稼ぎに行く人が多い

結果・対策

世界の工場。GDPはアメリカに次ぐ2位(2024年)

西部大開発で差を縮めようとしている。再生可能エネルギーを増やし、PM2.5の濃度は下がってきている

用語のまとめ

用語

種類

意味

一人っ子政策

政策

人口が急に増えるのをおさえるため、1979年から夫婦の子どもを1人に制限した政策。2015年に廃止

高齢化

人口の変化

お年寄りの割合が高くなること。一人っ子政策を見直した理由の1つ

漢族(漢民族)

民族

中国の人口の約9割をしめる民族

少数民族

民族

漢族以外の55の民族。主に西部などの国境に近い地域に住む

多民族国家

国のようす

たくさんの民族からなる国。中国は56の民族からなる

自治区

地域

少数民族の自治が認められた地域。チベット自治区・新疆ウイグル自治区など5つ

改革開放

政策

1978年から中国が進めた経済の政策。外国の資金を積極的に受け入れた

経済特区

地域

外国企業を呼びこむため、税金などを優遇した地域。改革開放のころ南部の海ぞいに5か所つくられた

シェンチェン

都市

ホンコンのとなりの港町。漁村から経済特区になり、大都市に成長した

世界の工場

呼び名

安い製品を大量につくって世界中に輸出する国。今は中国をさす

国内総生産(GDP)

統計

国全体の経済の大きさ。中国は2010年に日本を抜いた

沿岸部(沿海部)

地域

東の海ぞいの地域。発展が進んだ

内陸部

地域

西の、海から遠い地域。発展がおくれている

経済格差

課題

沿岸部と内陸部、都市と農村などの経済の差

出稼ぎ

人の動き

内陸の農村から沿岸の都市へ働きに行くこと

西部大開発

計画

西の内陸部を開発して、沿岸部との差を縮めようとする国の計画(2000年ごろから)

大気汚染

課題

大都市を中心に深刻になった。PM2.5などが原因

PM2.5

物質

石炭を燃やす火力発電や自動車の排気ガスなどに含まれ、大気汚染の原因になる物質

化石燃料

燃料

石炭・石油など。中国はエネルギーの半分ほどを今も石炭にたよる(2025年)

再生可能エネルギー

エネルギー

風力・太陽光などのエネルギー。中国は発電を大きく増やしている

よくある間違い

2024年の統計で、中国の人口は世界2位です。 1位はインドで、国連の推計では2023年にインドが中国を上回ったとされています。古い資料と答えが食い違ったら、何年の統計かを確かめてください。

一人っ子政策は2015年に廃止されました。 その後、2人目、2021年には3人目の子どもまで認めています。

改革開放のころの経済特区は、南部の海ぞいにつくられました。 シェンチェン・チューハイ・スワトウ・アモイ・ハイナン省の5か所で、内陸ではありません。地図で場所を選ぶ問題では、南部の海ぞいを探します。

経済特区と改革開放は、同じものではありません。 改革開放は1978年からの経済の政策で、経済特区はその中心としてつくられた地域です。政策と地域を取り違えないようにしてください。

内陸部のすべてが低いわけではありません。 沿岸部が高く、内陸部が低い「傾向」です。記述では「沿岸部と内陸部の経済格差」と、2つの地域を組にして書きます。

西部大開発は、差を縮めようとしている計画です。 2024年の統計でも、1人あたりの生産額に4倍以上の差が残っています。

大気汚染は、深刻になったあと対策も進められています。 PM2.5の濃度は2013年ごろより下がってきていますが、2023年の統計でも日本の約3倍です。

中国のGDPは、2024年の統計でアメリカに次ぐ2位です。 中国は2010年に日本を抜きました。経済の成長の速さも、今は1年あたり5%ほどに落ち着いています。

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流れをざっと確かめたいときはアニメーション編を、統計の見方までくわしく知りたいときは詳細解説編の動画を見てください(動画は準備中です)。

重要語句 一人っ子政策、漢族、経済特区、西部大開発

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