中学社会・地理・世界のさまざまな地域・No.22

東南アジア ― プランテーションから工業化へ

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解説

東南アジアは、植民地の時代に開かれたプランテーションで、輸出するための作物をつくってきた地域です。1980年ごろからは、日本などの外国企業を受け入れて工業化を進め、今は機械類などの工業製品の輸出が中心になりました。この単元で押さえるのは、ASEANと人々、プランテーションの作物、工業化の3つです。

東南アジアはどこにある? インドシナ半島の大陸部と、島々の島しょ部

東南アジアは、インドシナ半島の大陸部と、たくさんの島々の島しょ部に分かれています。

大陸部にあるのは、ミャンマー、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナムの5か国です。島しょ部にあるのは、マレーシア、シンガポール、インドネシア、ブルネイ、フィリピン、東ティモールの6か国です。「インドシナ半島の大陸部」と「島々の島しょ部」という分け方は、地図の問題の入り口になります。

赤道は、マレー半島の先にあるシンガポールのすぐ近くを通っています。東南アジアは赤道を中心に南北に広がっているので、一年中気温が高く、雨が多い地域です。この暑い気候を生かして、米のほか、天然ゴムやコーヒー、油やしなど、輸出するための作物がつくられてきました。

1ASEANと人々 2025年から11か国・華人・多民族国家マレーシア

ASEAN(東南アジア諸国連合)は、東南アジアの国々が協力するための組織です。1967年に、インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア、シンガポールの5か国が、地域の安定を目指してつくりました。

その後、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアが加わって10か国になりました。そして2025年10月に東ティモールが加わり、加盟国は11か国になっています。東南アジアのすべての国が加盟していることになります。古い教科書や資料集では加盟国の数が今とちがうことがあるので、数を答えるときは資料の年も見ます。

ASEANの国々は、経済の成長や政治の安定のために、加盟国どうしで協力しています。日本や中国や韓国は、ASEANの加盟国ではありません。ASEANとの話し合いの場に参加している、という関係です。

東南アジアには、華人と呼ばれる人たちがたくさん住んでいます。華人は、中国から海外に移り住んだ人々やその子孫で、住んでいる国の国籍を持つ人のことです。中国の国籍のままの人は華僑といい、華人とは区別します。華人は東南アジアに多く住んでいて、経済に大きな影響力を持っています。

たとえばシンガポールでは、国民の7割以上が華人で、政治や経済で力を持っています。マレーシアでは、2024年の統計で人口の約2割(22.4%)が中国系の人々です(マレーシア統計局、単位: %=人口にしめる割合)。マレーシアでは、華人は都市に多く住んでいます。

マレーシアには、マレー系の人々が一番多く住んでいて、ほかに中国系やインド系の人々も暮らしています。中国系やインド系の人々は、イギリスの植民地だった時代に、労働者として移り住んだ人々の子孫が多いです。ちなみに、ゴム園で働く人の多くは、インド系の人々でした。このように、さまざまな民族が一つの国でいっしょに暮らしている国を多民族国家といいます。

宗教は、アジア州の農業や宗教の回で見たとおり、タイなど大陸部は仏教、インドネシアやマレーシアはイスラム教、フィリピンはキリスト教の人が多い地域です。

2プランテーション 天然ゴムはタイ・油やしはインドネシアとマレーシア・バナナはフィリピン

プランテーションとは

プランテーションは、植民地の時代に、ヨーロッパの国々などが資金や技術を持ちこんで、現地の安い労働力を使って開いた大農園のことです。輸出するための作物を、1種類、大規模につくります。かんたんに言うと、外国に売るための作物を、広い農園でたくさんつくるのがプランテーションです。

東南アジアには、ヨーロッパの国々の植民地だったころに、多くのプランテーションが開かれました。マレーシアやインドネシアの天然ゴム、インドネシアのコーヒーなどがその例です。第二次世界大戦のあとは、油やしが新しい作物として広がっていきました。

第二次世界大戦のあと、東南アジアの国々が独立すると、プランテーションの経営は大きく変わりました。たとえばマレーシアのゴム園は、以前はイギリス人や中国人が経営する大農園が多かったのですが、マレー人の小さな農園が増えました。植民地の時代に始まり、独立したあとは形を変えている、という流れがポイントです。

天然ゴム 2024年の統計でタイが世界1位

天然ゴムは、ゴムノキの幹に傷をつけて出てくる白い液(樹液)を集めてつくるゴムです。ゴムノキは、もとはアマゾン川の流域に生えていた木です。

順位

国

生産量

1位

タイ

478万9042t(世界の32.3%)

2位

インドネシア

226万2088t(世界の15.3%)

出典: FAOSTAT(国連食糧農業機関)(2024年、単位: t=トン。世界の割合は国別の値から計算)

2024年の統計で、天然ゴムの生産はタイが世界1位で、世界の約3割をしめています。2位はインドネシアで、東南アジアの国が上位に多くなっています。古い資料ではほかの国が1位になっていることもあり、統計の年を見落とすと答えがずれます。

油やし 2024年の統計でインドネシアとマレーシアが世界の8割以上

油やしは、実から油をとるヤシの木で、もとは西アフリカの植物です。この実からとれる油をパーム油といい、マーガリンなどの食品や、せっけん、化粧品などに使われています。

順位

国

油やし(果実)の生産量

1位

インドネシア

2億4300万t(世界の58.0%)

2位

マレーシア

1億16万3525t(世界の23.9%)

出典: FAOSTAT(国連食糧農業機関)(2024年、単位: t=トン。油やしの果実の量。インドネシアの値は推計値。世界の割合は国別の値から計算)

2024年の統計で、油やしの生産はインドネシアが1位、マレーシアが2位です。この2か国で、世界の8割以上(81.9%)をつくっています。

バナナ 日本向けの大農園があるフィリピンのミンダナオ島

フィリピン南部のミンダナオ島では、1960年代後半から、日本やアメリカの企業がバナナの大農園を開きました。今も、主に日本向けのバナナがつくられています。

2024年の統計で、日本が輸入するバナナのおよそ4分の3(75.8%)がフィリピンから来ています(農林水産省「農林水産物輸出入概況」、財務省の貿易統計による。単位: %=輸入の数量にしめる割合)。一方で、フィリピンのバナナの生産量そのものは、2024年の統計で世界7位です(FAOSTAT)。フィリピンのバナナは、「日本向けの輸出用の大農園」が特徴です。

米 大きな川の下流と二期作

プランテーションの作物とは別に、東南アジアでは米づくりもさかんです。タイのチャオプラヤー川の下流や、ベトナムのメコン川の下流のメコンデルタは、米の大産地です。同じ田で1年に2回米をつくる二期作も行われています。

森林の減少とマングローブ

油やしの大きな農園は、森を切ったり焼いたりして開かれることが多いです。そのため、東南アジアの森林の破壊や、火事の原因になっていると指摘されています。プランテーションが広がると、熱帯林が減ったり、働く人の労働条件がきびしかったりすることが心配されています。

もう1つの森の問題が、マングローブです。マングローブは、熱帯や亜熱帯の海岸や河口の、海水が入りこむ所に育つ木々の森のことです。東南アジアでは、えびを育てる養殖池をつくるために、マングローブの林が切られてきました。えびの養殖池は、マングローブが減る主な原因の一つで、養殖したえびは日本などへも輸出されています。

ただ、国連食糧農業機関(FAO)の報告では、世界全体で見ると、2010年から2020年のマングローブの減り方は、その前の10年より小さくなっています。今の様子は「減ってきた」という言い方で覚えておくと正確です。

3工業化 1980年ごろから外国企業・工業団地・輸出品は機械類へ

外国企業の受け入れと工業団地

東南アジアでは、1980年ごろから、日本などの外国企業を受け入れて、工業製品をつくって輸出するようになりました。特にマレーシア、タイ、インドネシアは、工業化によって経済がめざましく成長しました。

そのときに外国企業を招く場所になったのが、工業団地です。工業団地は、工場を計画的に集めるために、道路や水、電気などを先にととのえた土地のことです。工業化を進めている国々では、そのために工業団地がつくられます。

では、なぜ外国企業は東南アジアに工場をつくったのでしょうか。理由は2つあります。

1つ目は、工業団地がととのっていて、すでに多くの企業が進出していたことです。2つ目は、安い賃金で働く人を雇えることです。こうして、電気機械や自動車の工場が増えていきました。記述問題では「工業団地」と「安い賃金」の2つを入れて書けるようにしておくと安心です。

特にタイには、外国の企業がたくさん進出し、繊維、自動車、オートバイ、電気製品の生産が大きく増えました。教科書の資料(2018年)では、東南アジアで日本企業が一番多く進出しているのはタイです。また、1991年から2018年にかけては、ベトナムへの進出も大きく増えています。

輸出品の変化 農産物や原料から機械類などの工業製品へ

以前の東南アジアの輸出品は、米や天然ゴムなどの農産物や原料が中心でした。それが今は、機械類などの工業製品が中心になっています。

タイの例を数字で見てみましょう。

項目

1980年

2024年

輸出にしめる工業製品の割合

25.2%(4分の1ほど)

72.1%(約7割)

輸出にしめる食料の割合

47.0%(半分近く)

14.8%

出典: 世界銀行 World Development Indicators(1980年・2024年、単位: %=商品の輸出額にしめる割合)

タイでは、1980年には輸出の半分近くが米などの食料でした。工業製品は輸出の4分の1ほどでしたが、2024年には約7割になっています。「農産物や原料から、機械類などの工業製品へ」という変化が、このテーマの副題の「プランテーションから工業化へ」にあたります。

都市の課題 スラム・交通渋滞・大気汚染

仕事を求めて、農村から都市に多くの人が集まりました。都市では、上下水道などがととのっていない家が集まるスラムが広がっています。交通渋滞や、車の排気ガスによる大気汚染もひどくなっています。この3つは、都市の課題として組で問われます。

まとめ プランテーションから工業化への一本の線

東南アジアの流れは、次のように一本の線でつなげられます。

植民地の時代のプランテーションで、輸出用の作物(天然ゴム・コーヒー・油やしなど)をつくる → 1980年ごろから、工業団地に日本などの外国企業を招いて工業化を進める(理由は工業団地と安い賃金)→ 今は、輸出の中心が機械類などの工業製品になった

その一方で、熱帯林やマングローブの減少、都市のスラムや交通渋滞、大気汚染という課題もかかえています。ASEANは2025年に東ティモールが加わって11か国になり、加盟国どうしで協力しています。発展の流れと課題を、セットで説明できるようにしてください。

まとめの表

ポイント

押さえること

数字(調査年次・出典)

位置

インドシナ半島の大陸部(5か国)と、島々の島しょ部(6か国)。赤道の近くで、一年中気温が高く雨が多い

—

ASEAN

1967年に5か国でつくられた協力の組織。2025年10月に東ティモールが加わり11か国。日本・中国・韓国は加盟国ではない

加盟国11か国(2025年10月から)

人々

華人は住んでいる国の国籍を持つ。マレーシアはマレー系・中国系・インド系などが暮らす多民族国家

マレーシアの中国系 22.4%(2024年・マレーシア統計局)

プランテーション

植民地の時代に開かれた、輸出用の作物を1種類、大規模につくる大農園。独立後に経営が大きく変わった

—

作物

天然ゴムはタイ、油やしはインドネシアとマレーシア、バナナはフィリピン(日本向け)

天然ゴム タイ1位・世界の32.3%/油やし 2か国で81.9%(2024年・FAOSTAT)/日本のバナナの輸入の75.8%がフィリピン(2024年・農林水産省)

環境

油やしの農園が広がり熱帯林が減る。えびの養殖池のためにマングローブが減ってきた

—

工業化

1980年ごろから外国企業を受け入れる。理由は工業団地と安い賃金。日本企業はタイが最多(教科書の資料・2018年)

—

輸出品

農産物や原料から、機械類などの工業製品へ

タイの工業製品の割合 25.2%→72.1%(1980年→2024年・世界銀行)

都市の課題

農村から都市へ人が集まり、スラム・交通渋滞・大気汚染

—

用語のまとめ

用語

種類

意味

大陸部

地域

東南アジアのうち、インドシナ半島にある部分。ミャンマー・タイ・ラオス・カンボジア・ベトナムの5か国

島しょ部

地域

東南アジアのうち、たくさんの島々からなる部分。マレーシア・シンガポール・インドネシア・ブルネイ・フィリピン・東ティモールの6か国

ASEAN(東南アジア諸国連合)

組織

東南アジアの国々が、地域の安定や経済の成長のために協力する組織。1967年に5か国でつくられ、2025年10月から11か国

華人

人々

中国から海外に移り住んだ人々やその子孫で、住んでいる国の国籍を持つ人。東南アジアに多く、経済に大きな影響力を持つ

華僑

人々

中国から海外に移り住んだ人々のうち、中国の国籍のままの人

多民族国家

国のようす

さまざまな民族が一つの国でいっしょに暮らしている国。マレーシアはマレー系・中国系・インド系などが暮らす

プランテーション

農業

植民地の時代に、ヨーロッパの国々などが資金や技術を持ちこみ、現地の安い労働力を使って開いた大農園。輸出用の作物を1種類、大規模につくる

天然ゴム

作物

ゴムノキの幹に傷をつけて出てくる白い液(樹液)を集めてつくるゴム。2024年の統計でタイが世界1位

油やし

作物

実から油をとるヤシの木。もとは西アフリカの植物。2024年の統計でインドネシアが世界1位、マレーシアが2位

パーム油

製品

油やしの実からとれる油。マーガリンなどの食品や、せっけん・化粧品などに使われる

ミンダナオ島

島

フィリピン南部の島。日本やアメリカの企業が開いた、日本向けのバナナの大農園がある

二期作

農業

同じ田で、1年に2回米をつくること

熱帯林

自然

熱帯の森。油やしの農園などのために切られ、減ることが心配されている

マングローブ

自然

熱帯や亜熱帯の海岸や河口の、海水が入りこむ所に育つ木々の森。えびの養殖池をつくるために切られてきた

工業団地

工業

工場を計画的に集めるために、道路や水、電気などを先にととのえた土地

外国企業

工業

ほかの国の企業。東南アジアは1980年ごろから日本などの外国企業を受け入れ、工業化を進めた

機械類

輸出品

工業製品の種類の一つ。今の東南アジアの輸出は機械類などの工業製品が中心で、以前の中心は米や天然ゴムなどの農産物や原料だった

スラム

都市の課題

上下水道などがととのっていない家が集まる所。農村から都市に人が集まって広がった

よくある間違い

2025年10月に東ティモールが加わり、ASEANの加盟国は11か国になりました。 古い資料では加盟国の数が今とちがうことがあります。何年の資料かを見てから答えます。

日本・中国・韓国は、ASEANの加盟国ではありません。 ASEANとの話し合いの場に参加している、という関係です。

華人は、中国から海外に移り住んだ人々やその子孫で、住んでいる国の国籍を持つ人です。 中国の国籍のままの人は華僑といいます。国籍がどちらかで呼び名が変わります。

2024年の統計では、天然ゴムの生産はタイが世界1位です。 2位はインドネシアです。古い資料では1位の国がちがうことがあるので、統計の年を確かめます。

日本が輸入するバナナの多くはフィリピンから来ていますが、フィリピンのバナナの生産量は、2024年の統計で世界7位です。 フィリピンの特徴は、日本向けの輸出用の大農園です。

東南アジアでは、えびの養殖池をつくるためにマングローブの林が切られ、マングローブが減ってきました。 国連食糧農業機関(FAO)の報告では、世界全体で見ると、2010年から2020年の減り方はその前の10年より小さくなっています。

教科書の資料(2018年)では、東南アジアで日本企業が一番多く進出しているのはタイです。 統計の問題と同じく、資料の年とセットで覚えます。

東南アジアの輸出の中心が農産物や原料から機械類などの工業製品に変わったことが、「プランテーションから工業化へ」の中身です。 タイでは、輸出にしめる工業製品の割合が、1980年の4分の1ほどから、2024年には約7割になりました。

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作物と国の組み合わせをざっと確かめたいときはアニメーション編を、プランテーションの成り立ちや統計の見方までくわしく知りたいときは詳細解説編の動画を見てください(動画は準備中です)。

重要語句 ASEAN、プランテーション、工業団地、華人

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