中学社会・地理・世界のさまざまな地域・No.23

南アジア ― インドの人口とICT産業

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解説

インドは、2024年の統計で人口が世界1位の国です。そのインドで、1990年代の終わりごろから急に伸びたのがICT(情報通信技術)産業でした。人口・宗教・農業を順に見たあと、なぜインドでICT産業が伸びたのかを、理由を数えながら確かめていきます。

インドはどこにある? アジア州の南部(南アジア)

インドは、アジア州の南部にある南アジアの中心の国です。北にヒマラヤ山脈、東にベンガル湾、西にアラビア海があり、インド洋に逆三角形の形で突き出しています。面積は日本の約9倍です。

南アジアには、インドのほかにも国があります。西どなりがパキスタン、東どなりがバングラデシュ、南東の海にある島国がスリランカです。北のほうにはネパールやブータンがあります。インドを真ん中に、まわりの国の位置を方位で言えるようにしておくと、地図の問題で迷いません。

1人口と宗教 2024年の統計で世界1位・ヒンドゥー教・カースト制度

2024年の統計で、インドの人口は約14億5000万人です。国連の推計では、2023年にインドが中国を上回ったとされていて、今はインドが世界1位、中国が2位です。古い教科書や資料集では順番が逆になっていることがあるので、何年の統計かを見比べてください。

順位

国

人口

1位

インド

約14億5094万人(世界の17.8%)

2位

中国

約14億898万人

3位

アメリカ

約3億4000万人

4位

インドネシア

約2億8349万人

5位

パキスタン

約2億5127万人

出典: 世界銀行 World Development Indicators(2024年、単位: 人。世界の割合は国別の値から計算)

インドの人口は、1960年には約4億3599万人でした。それが2024年には約14億5094万人になり、3倍以上(3.33倍)に増えています。同じ期間に中国は約2.1倍なので、インドの増え方の大きさがわかります(世界銀行、単位: 人。倍率は計算値)。

年齢の割合も見てみましょう。

項目

インド

中国

日本

世界

15歳未満の人口の割合

24.6%(約4分の1)

16.0%(約6分の1)

11.4%(約9分の1)

24.7%

65歳以上の人口の割合

7.1%

14.7%

29.8%

10.2%

出典: 世界銀行 World Development Indicators(2024年、単位: %=総人口にしめる割合)

15歳未満の子どもが人口の約4分の1をしめていて、中国や日本より子どもの割合が高いことがわかります。反対に、65歳以上のお年寄りの割合は日本の約4分の1です。

ただし、増え方はゆるやかになってきています。1人の女性が一生に生む子どもの数の平均は、1980年には4.775人でしたが、2024年には1.962人と、2人を少し下回るまで下がりました。人口が1年で増える割合も、1980年の2.38%から、2024年には0.89%になっています(どちらも世界銀行)。インドの人口は今も増えていますが、増え方はゆるやかになってきた、という見方が正確です。

人口が増える中で、多くの人が仕事を求めて都市に集まりました。その結果、都市では大気汚染や交通渋滞の問題が起きています。都市と農村の間の経済格差も大きな問題になっていて、農村には学校に行けない貧しい人々も多くいます。また、国全体で見ても、2024年の統計で、1人あたりの国内総生産(GDP)はインドが2,592ドルで、中国(13,293ドル)や日本(33,797ドル)よりかなり低い値です(世界銀行、単位: 米ドル)。国全体の人口は世界1位でも、1人あたりで見るとまだ低い水準です。

宗教では、インドで一番多くの人が信仰しているのがヒンドゥー教です。ヒンドゥー教は、インドの民族宗教です。2011年の国勢調査では、インドの人の約8割がヒンドゥー教を信仰していました。

宗教

人口にしめる割合

ヒンドゥー教

79.8%

イスラム教

14.2%

キリスト教

2.3%

シク教

1.7%

仏教

0.7%

出典: インド国勢調査(2011年、単位: %=総人口にしめる割合。宗教別の人数から計算)

ヒンドゥー教とセットで問われるのがカースト制度です。カースト制度は、インドの社会で長い歴史の中でつくられた身分制度で、ヒンドゥー教徒は生まれによってどれかのカーストに属します。カーストによっては、親から子へ同じ職業を受けつぐことがあり、結婚する相手の範囲や職業との結びつきも今も残っています。

1950年の憲法で、カーストによる差別は否定されました。ただ、カーストの考え方は今も根強く残り、社会の問題になっています。こうした今も残る影響を、カースト制度の名残といいます。「差別は憲法で否定された」と「影響は今も残っている」の両方を書けるかが、記述問題の分かれ目です。

2農業 雨の多い東は米・北西は小麦・デカン高原の綿花・アッサム地方の茶

インドの農業は、雨の量と結びつけて覚えるのがポイントです。雨の多い地域では稲作(米づくり)が、雨の少ない地域では小麦や綿花の栽培が行われています。

米は、インドの東部や海岸の平野に多くつくられています。ヒマラヤから東へ流れてベンガル湾に注ぐガンジス川の流域は、米の大産地です。一方、ガンジス川の上流から北西部にかけては、小麦の産地が広がっています。

南部の半島には、広いデカン高原があります。デカン高原は雨が比較的少なく、黒い土が広がっていて、綿花の栽培がさかんです。北東部のアッサム地方は雨が多く、茶の産地として有名です。インドがイギリスの植民地だったころに、茶のプランテーション(大農園)が発達しました。

インドで米や小麦の生産が増えたきっかけが、1960年代から進んだ緑の革命です。たくさん収穫できる稲や小麦の品種を取り入れていった、農業の技術の革新のことで、インドは1980年代ごろまでに米や小麦をほぼ自給できるようになりました。

作物

1位

2位

インドの生産量

米(もみ)

インド

中国

約2億1787万t(世界の26.6%)

小麦

中国

インド

約1億1329万t(世界の14.2%)

綿花(実綿)

中国

インド

1500万t(世界の20.6%)

茶(生葉)

中国

インド

約616万t(世界の18.8%)

出典: FAOSTAT(国連食糧農業機関)(2024年、単位: t=トン。世界の割合は国別の値から計算)

米・小麦・綿花・茶は、どれも生産量が世界で1位か2位です。ただ、米の順位は年によって中国と入れかわることがあります。統計の問題では、何年の統計かを先に確かめてください。

3ICT産業 南部のベンガルールが中心地・英語、数学、時差、人件費

ICT(情報通信技術)産業のICTは、コンピューターで情報を処理したり、インターネットなどのネットワークで通信したりする技術やサービスのことです。IT(情報技術)とほぼ同じ意味で、IT産業ともいいます。

インドでは、1990年代の終わりごろからICT産業が急に発展し、今ではインドの経済成長の中心になっています。仕事の中心は、ソフトウェア(コンピューターのプログラム)をつくることで、その多くを外国へ輸出しています。

順位

国

ICTサービスの輸出額

1位

アイルランド

約3047億ドル

2位

インド

約1777億ドル(世界の13.9%)

3位

アメリカ

約899億ドル

4位

中国

約685億ドル

5位

イギリス

約599億ドル

出典: 世界銀行 World Development Indicators(2024年、単位: 米ドル)

この表は、ICTの「サービス」を外国に売った金額の順位です。2024年の統計で、インドは世界2位です。インドのICTサービスの輸出額は、2000年の約50億ドルから2024年の約1777億ドルへ、30倍以上(35.4倍)に増えました(世界銀行、単位: 米ドル。倍率は計算値)。

輸出先を見ると、アメリカが一番多くなっています。帝国書院の資料によると、2017年度のICT関連産業の輸出先は、アメリカ合衆国が57.8%、イギリスが17.9%、その他が24.3%でした(輸出額にしめる割合)。上の輸出額の表とは別の資料・別の年度の数字なので、「2024年の輸出額は世界2位」「2017年度の輸出先は約6割がアメリカ」と、何の数字かを分けて覚えてください。

ICT産業の中心地が、南部の都市ベンガルールです。デカン高原の上にある都市で、もとの名前はバンガロールといい、2014年に今の名前に変わりました。古い資料ではバンガロールと書かれていることもあります。

では、なぜインドでICT産業が伸びたのでしょうか。教科書で問われる理由は、英語・数学・時差の3つと、人件費です。

1つ目は英語です。インドは1947年までイギリスの植民地でした。そのため、今も英語が準公用語として政治や教育で使われています。公用語にあたるのはヒンディー語で、英語は準公用語という位置づけです。英語を話せる人が多いことが、アメリカなど英語の国の仕事を引き受けるのに役立ちました。

2つ目は、数学や理工系の教育です。インドは独立後、理工系の大学をつくり、理工系の人材を育てることに力を入れてきました。数学の水準が高いことも、ICT産業が伸びた理由の1つです。

3つ目は、アメリカとの約半日の時差です。アメリカの西海岸には、IT企業が集まるシリコンバレーという地域があります。シリコンバレーとインドの時差は、標準時で13時間30分です。

シリコンバレー

時差

インド

夕方6時(18:00)に仕事を終える

13時間30分

次の日の朝7時30分(7:30)に続きを始める

アメリカの企業が仕事をしない夜の時間に、インドでその仕事を引き継いで進められます。

もう1つ、人件費(働く人に払うお金)が安いことも理由です。人件費が安いインドから、通信を使って、アメリカなどの会社の仕事を引き受けるようになりました。そのとき、アメリカに住むインド系の人たちが、仕事をつなぐ役になりました。

記述問題では、「英語を話せる人が多い」「数学の水準が高い」「アメリカとの時差が約半日」の3つを、アメリカとの結びつきとあわせて書けるようにしておくと安心です。

ちなみに、インドの東どなりのバングラデシュでは、安い労働力を生かした縫製業(衣類をつくる工業)が主な産業になっています。

まとめ 人口・農業・ICT産業をひと続きで

インドのようすは、次のように一本の線でつなげられます。

人口が増え続けるインド(2024年の統計で約14億5000万人・世界1位)→ 雨の量に合わせた農業(東の米・北西の小麦・デカン高原の綿花・アッサム地方の茶)→ 1990年代の終わりごろからICT産業が急に発展(中心地はベンガルール)→ 理由は英語・数学・アメリカとの約半日の時差(標準時で13時間30分)と、安い人件費

その一方で、都市の大気汚染や交通渋滞、都市と農村の経済格差という課題もかかえています。発展の理由と課題を、セットで説明できるようにしてください。

まとめの表

ポイント

押さえること

数字(調査年次・出典)

人口

中国を上回り世界1位。15歳未満の子どもの割合が高い。今も増えているが、増え方はゆるやかになってきた

約14億5094万人・15歳未満24.6%(2024年・世界銀行)

人口の課題

都市に人が集まり、大気汚染・交通渋滞。都市と農村の経済格差も大きな問題。国全体で見ても、1人あたりの国内総生産はまだ低い

1人あたりGDP 2,592ドル(2024年・世界銀行)

宗教

ヒンドゥー教が約8割。カースト制度は、憲法で差別を否定したが影響が今も残る

ヒンドゥー教79.8%(2011年・インド国勢調査)

農業

東の米・北西の小麦・デカン高原の綿花・アッサム地方の茶。1960年代からの緑の革命

米1位、小麦・綿花・茶は2位(2024年・FAOSTAT)

ICT産業

ソフトウェアの仕事が中心で、多くを輸出。中心地はベンガルール

ICTサービスの輸出額 世界2位(2024年・世界銀行)/輸出先の57.8%がアメリカ(2017年度・帝国書院の資料)

伸びた理由

英語(準公用語)・数学や理工系の教育・アメリカとの約半日の時差・安い人件費

時差は標準時で13時間30分

用語のまとめ

用語

種類

意味

南アジア

地域

アジア州の南部。インドを中心に、パキスタン・バングラデシュ・スリランカ・ネパール・ブータンなどがある

ヒマラヤ山脈

地形

インドの北にある大山脈

経済格差

課題

都市と農村などの経済の差。インドでは大きな問題になっている

ヒンドゥー教

宗教

インドの民族宗教。インドの人の約8割が信仰(2011年の国勢調査)

カースト制度

身分制度

インドの社会で長い歴史の中でつくられた身分制度。1950年の憲法で差別は否定されたが、影響が今も残る

稲作

農業

米づくり。雨の多い東部や海岸の平野でさかん

ガンジス川

川

ヒマラヤから東へ流れ、ベンガル湾に注ぐ。流域は米の大産地

デカン高原

地形

インド南部の半島の広い高原。雨が比較的少なく、黒い土が広がる。綿花の栽培がさかん

アッサム地方

地域

インド北東部。雨が多く、茶の産地として有名

緑の革命

農業の技術

1960年代から、たくさん収穫できる稲や小麦の品種を取り入れた農業の技術の革新

ICT(情報通信技術)

技術

コンピューターで情報を処理したり、ネットワークで通信したりする技術やサービス。ITとほぼ同じ意味

ソフトウェア

製品

コンピューターのプログラム。インドのICT産業の仕事の中心

ベンガルール

都市

インド南部、デカン高原の上の都市。ICT産業の中心地。もとの名前はバンガロール

準公用語

言葉

インドでの英語の位置づけ。公用語にあたるのはヒンディー語

シリコンバレー

地域

アメリカの西海岸の、IT企業が集まる地域。インドとの時差は標準時で13時間30分

人件費

お金

働く人に払うお金。インドは安いことも、ICT産業が伸びた理由の1つ

縫製業

工業

衣類をつくる工業。インドの東どなりのバングラデシュの主な産業

よくある間違い

2024年の統計で、インドの人口は世界1位です。 国連の推計では、2023年にインドが中国を上回ったとされています。古い資料と答えが食い違ったら、何年の統計かを確かめてください。

インドの人口は今も増えていますが、増え方はゆるやかになってきています。 1人の女性が一生に生む子どもの数の平均は、2024年には2人を少し下回りました。「増えている」と「ゆるやかになってきた」を組にして覚えます。

カースト制度による差別は1950年の憲法で否定されましたが、影響は今も残っています。 結婚する相手の範囲や職業との結びつきに、カーストの考え方が残っています。

2024年の統計では、米の生産量はインドが世界1位です。 米の順位は年によって中国と入れかわります。小麦・綿花・茶は、2024年の統計で中国が1位、インドが2位です。

インドで英語は準公用語です。 公用語にあたるのはヒンディー語です。イギリスの植民地だったことから、今も政治や教育で英語が使われています。

シリコンバレーとインドの時差は、標準時で13時間30分(約半日)です。 シリコンバレーの夕方6時は、インドでは次の日の朝7時30分です。

「世界2位」は2024年のICTサービスの輸出額の順位、「約6割」は2017年度の輸出先にしめるアメリカの割合です。 どちらもICT産業の数字ですが、資料も年度も数えたものも違います。

ベンガルールとバンガロールは同じ都市です。 2014年に、バンガロールから今のベンガルールに名前が変わりました。

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重要語句 カースト制度、ICT産業、ベンガルール、アッサム

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