解説
EU(ヨーロッパ連合)は、ヨーロッパ州の国々がつくっている組織で、2026年の時点で27か国が加盟しています。もとは6か国から始まったまとまりが、どうして大きくなったのか。まとまった理由、国境をこえて変わった生活、加盟国が広がっていった流れの3つを、年といっしょに確かめていきます。
EUってどんな組織? ヨーロッパ州の国々がつくる連合
EU(ヨーロッパ連合)は、ヨーロッパ州の国々がつくっている連合です。欧州連合とよばれることもあります。本部は、ベルギーの首都ブリュッセルにあります。
2026年の時点で、EUの加盟国(EUに加わっている国)は27か国です。加盟国の数は年によって変わってきたので、数を答えるときは「何年の時点の数か」をセットにして覚えます。
1EUができた理由 戦争の反省と大国への対抗・1967年にEC、1993年にEU
第二次世界大戦のあと、ヨーロッパの国々の世界での力が弱まるなかで、国どうしで結びつこうとする動きが出てきました。まとまろうとした理由は、大きく2つあります。
1つ目は、戦争の反省です。ヨーロッパの国々は、二度の世界大戦を経験しました。その経験から、もう戦争をくり返さず、民主的で平和なヨーロッパを築こうとしたのです。
そこでまず、フランスとドイツの対立をなくそうとしました。1952年、6か国で石炭と鉄鋼をいっしょに管理するしくみがつくられます。これがヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)です。石炭と鉄鋼をいっしょに管理すれば、1つの国が勝手に戦争の武器をつくって、ほかの国に向けることができなくなります。このしくみが、EUのいちばんのもとになりました。
2つ目は、大国に対抗するためです。当時のヨーロッパは中小の国に分かれていて、そのままでは、急に力をつけてきたアメリカや当時のソ連に対抗できませんでした。そこで、まとまって大きな力をもとうとしたのです。
今のEUの大きさを、数字で確かめてみましょう。下の表のEUは、27か国の値を合わせた数です。
項目 | EU(27か国の合計) | アメリカ | 中国 | 日本 |
|---|---|---|---|---|
人口 | 約4億5023万人 | 約3億4000万人 | 約14億898万人 | 約1億2398万人 |
GDP(国内総生産) | 約19兆5000億ドル(世界の17.5%) | 約29兆3000億ドル(世界の26.2%) | 約18兆7300億ドル(世界の16.8%) | 約4兆1900億ドル(世界の3.8%) |
出典: 世界銀行 World Development Indicators(2024年、単位: 人・米ドル。GDP の世界の割合は国別の値から計算)
2024年の統計で、EUの27か国を合わせた人口は、アメリカより多くなっています。GDPを合わせると、アメリカに次ぐ大きさで、中国をわずかに上回ります。ただし、EUは1つの国ではないので、国の順位には入れません。1つの国では小さくても、まとまれば大国に並べる、というのが、この表から読み取れることです。
この2つの理由をもとに、ヨーロッパの国々は少しずつまとまっていきました。1967年、石炭と鉄鋼の共同体をふくむ3つの共同体をまとめて、EC(ヨーロッパ共同体)ができます。フランス、西ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの6か国で始まりました。
そして1993年、マーストリヒト条約が発効して、ECはEU(ヨーロッパ連合)に発展しました。マーストリヒトは、オランダ南部の都市の名前です。ECが発展して名前もEUに変わった、と考えるとわかりやすいでしょう。CはCommunity(共同体)、UはUnion(連合)の頭文字なので、アルファベットの意味と結びつけると、1967年のECと1993年のEUの順番を取りちがえにくくなります。
このように、国どうしが結びついて1つのまとまりになることを、統合といいます。
2国境をこえて自由に 関税なし・多くの国の間でパスポートなし・共通通貨ユーロ
統合で、人々の生活は大きく変わりました。
まず、加盟国どうしの貿易では、関税をなくしました。関税は、外国から輸入するものにかける税金です。1968年に最初の6か国の間で関税をなくし、国境をこえて自由に売り買いできるようになりました。
1993年からは、人・もの・サービス・お金の4つが、国境をこえて自由に動けるようになります。EUの国の人は、ほかの加盟国で働くのに許可がいらず、ほかの加盟国に住むこともできます。国境をこえる高速鉄道も整備されました。イギリスのロンドンと、フランスのパリやベルギーのブリュッセルを結ぶユーロスターがその例です。
国境での手続きも変わりました。日本から外国へ行くときは、空港でパスポートを見せます。ところが、EUの多くの国の間では、国境でパスポートを見せずに行き来できるのです。となりの県に行くような感覚で、となりの国へ行けるイメージです。
これを決めているのがシェンゲン協定です。シェンゲン協定は、参加する国の間で、国境での出入国の審査をなくす決まりです。名前は、ルクセンブルクにあるシェンゲンという小さな町からきています。
区分 | 国 |
|---|---|
シェンゲン協定に参加している国(2026年の時点で29か国) | EUの25か国と、EUに入っていないアイスランド・ノルウェー・スイス・リヒテンシュタインの4か国 |
EUの国でも国境で検査がある国(2026年の時点) | アイルランド(シェンゲン協定に参加していない)・キプロス(参加しているが、国境での検査がまだ残る) |
出典: 欧州委員会 Schengen area(2026年10月21日閲覧、単位: か国)
シェンゲン協定に参加する国にはEU以外の国もふくまれ、反対に、EUの国でもアイルランドやキプロスとの間では、2026年の時点で国境での検査があります。パスポートなしで行き来できるのは「EUの多くの国の間で」と、範囲をつけて書くのが正確です。
もう1つの大きな変化が、共通通貨のユーロです。ユーロは、EUの共通の通貨です。1999年に導入されましたが、最初は銀行などの取引だけで使われていました。お札とコインが使われ始めたのは2002年からです。資料によって「1999年」と書いてあったり「2002年」と書いてあったりするので、「1999年に導入、2002年からお札とコイン」の2段で覚えると迷いません。
ユーロを使う国の間なら、両替しなくても旅行や買い物ができ、値段もくらべやすくなりました。ただし、EUの国がすべてユーロを使っているわけではありません。
区分 | 国の数(2026年の時点) | 国 |
|---|---|---|
ユーロを使う国 | 21か国 | オーストリア・ベルギー・ブルガリア・クロアチア・キプロス・エストニア・フィンランド・フランス・ドイツ・ギリシャ・アイルランド・イタリア・ラトビア・リトアニア・ルクセンブルク・マルタ・オランダ・ポルトガル・スロバキア・スロベニア・スペイン |
使わないことを認められた国 | 1か国 | デンマーク |
条件がそろえば導入する予定の国 | 5か国 | チェコ・ハンガリー・ポーランド・ルーマニア・スウェーデン |
出典: EU公式サイト Countries using the euro(2026年10月21日閲覧、単位: か国)
2026年の時点で、ユーロを使っているのはEU27か国のうち21か国です。いちばん新しいのは、2026年1月から使い始めたブルガリアです。デンマークは自分の国のお金を使い続けています。また、イギリスは、EUに加盟していたころもユーロを使っていませんでした。ユーロは「使っている国と使っていない国がある」ことが、選択問題のひっかけになります。
3加盟国の拡大 2004年から東ヨーロッパへ・2020年にイギリスが離脱
第二次世界大戦のあと、ヨーロッパは冷戦で西と東に分かれました。冷戦は、アメリカなどの西側と、ソ連などの東側が、世界を2つに分けて対立したことです。ECに入っていたのは、西側の国だけでした。
それが2004年に大きく変わります。ポーランドやチェコ、ハンガリーなど、東ヨーロッパの国々を中心に、10か国が一度に加盟したのです。2007年にはブルガリアとルーマニアも加わりました。こうして、冷戦で分かれていた東と西のヨーロッパが1つにまとまりました。2013年にはクロアチアが28番目の国として加わり、このころが、加盟国がいちばん多かった時期です。
ところが、2016年にイギリスで国民投票が行われ、EUからの離脱が決まりました。そして2020年1月、イギリスがEUを離脱します。イギリスは、EUを離れた初めての国です。
年 | できごと | 加盟国の数 |
|---|---|---|
1967年 | EC ができる | 6か国 |
1993年 | EU が発足 | 12か国 |
2004年 | 東ヨーロッパの国々を中心に10か国が加盟 | 25か国 |
2007年 | ブルガリア・ルーマニアが加盟 | 27か国 |
2013年 | クロアチアが加盟 | 28か国(いちばん多いとき) |
2020年 | イギリスが離脱 | 27か国 |
2026年の時点 | ― | 27か国 |
出典: EU公式サイト EU countries・History of the EU(2026年10月21日閲覧、単位: か国)
6か国から始まって、いちばん多いときで28か国、2026年の時点で27か国という流れです。古い資料では、イギリスが入ったままの数になっていることがあります。数を答える問題では、何年の時点の数かを先に確かめてください。
加盟国が増える一方で、加盟国の間には、豊かな国とそうでない国の差もあります。2024年の統計で、1人あたりの国民総所得は、加盟国でいちばん高いルクセンブルクが84,650ドル、いちばん低いブルガリアが15,370ドルでした。この2か国の間で約5.5倍の差です(世界銀行、単位: 米ドル。倍率は計算値)。こうした課題は、No.30「EUがかかえる課題」でくわしく扱います。
まとめ できた理由から2026年の時点の27か国まで
EUのあゆみは、次のように一本の線でつなげられます。
戦争をくり返さないため、そして大国に対抗するためにまとまる → 1952年に石炭と鉄鋼をいっしょに管理 → 1967年にEC → 1993年にEUに発展 → 加盟国どうしの貿易では関税なし・多くの国の間ではパスポートなし → 1999年にユーロを導入、2002年からお札とコイン → 2004年から東ヨーロッパへ拡大 → 2020年にイギリスが離脱し、2026年の時点で27か国
まとまった理由と、統合で生活がどう変わったかの両方が、記述問題でよく問われます。
まとめの表
ポイント | 押さえること | 数字(調査年次・出典) |
|---|---|---|
できた理由 | 戦争の反省(二度の世界大戦)と、アメリカなどの大国に対抗するため。1952年の石炭と鉄鋼の共同管理がもと | EU(27か国の合計)の人口 約4億5023万人・GDP 約19兆5000億ドル(2024年・世界銀行) |
ECからEUへ | 1967年に6か国でEC(ヨーロッパ共同体)。1993年にマーストリヒト条約が発効してEU(ヨーロッパ連合)に発展 | ECの加盟国の数 6か国(1967年)・EUの加盟国の数 12か国(1993年) |
国境をこえて自由に | 加盟国どうしの貿易では関税なし。人・もの・サービス・お金が自由に動く。多くの国の間ではパスポートなしで国境をこえられる(シェンゲン協定) | シェンゲン協定の参加国の数 29か国(2026年の時点・欧州委員会) |
共通通貨ユーロ | 1999年に導入、2002年からお札とコイン。両替しなくてよい。使わない加盟国もある | ユーロを使う国の数 21か国・使わない加盟国の数 6か国(2026年の時点・EU公式サイト) |
加盟国の拡大 | 冷戦で分かれていた東と西がまとまる。2004年に東ヨーロッパなど10か国、2007年にブルガリア・ルーマニア、2013年にクロアチア | 加盟国の数 25か国(2004年)・27か国(2007年)・28か国(2013年) |
イギリスの離脱 | 2016年の国民投票で決まり、2020年1月に離脱。EUを離れた初めての国 | 加盟国の数 27か国(2026年の時点・EU公式サイト) |
用語のまとめ
用語 | 種類 | 意味 |
|---|---|---|
EU(ヨーロッパ連合) | 組織 | ヨーロッパ州の国々がつくる連合。欧州連合ともいう。1993年にECから発展した。本部はブリュッセル |
加盟国 | 国 | EUに加わっている国。2026年の時点で27か国 |
ブリュッセル | 都市 | ベルギーの首都。EUの本部がある |
ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC) | しくみ | 1952年に6か国でつくった、石炭と鉄鋼をいっしょに管理するしくみ。EUのいちばんのもと |
EC(ヨーロッパ共同体) | 組織 | 1967年に、石炭と鉄鋼の共同体をふくむ3つの共同体をまとめてできた。6か国で始まった |
マーストリヒト条約 | 条約 | 1993年に発効し、ECをEUに発展させた条約。マーストリヒトはオランダ南部の都市 |
統合 | ことがら | 国どうしが結びついて1つのまとまりになること |
関税 | 税金 | 外国から輸入するものにかける税金。EUの加盟国どうしの貿易ではかけない |
シェンゲン協定 | 決まり | 参加する国の間で、国境での出入国の審査をなくす決まり。2026年の時点で29か国が参加し、EU以外の国もふくむ |
ユーロスター | 鉄道 | ロンドンとパリ・ブリュッセルを結ぶ、国境をこえる高速鉄道 |
ユーロ | 通貨 | EUの共通の通貨。1999年に導入、2002年からお札とコイン。2026年の時点で21か国が使う |
両替 | ことがら | ある国のお金を、ほかの国のお金と取りかえること。ユーロを使う国の間ではしなくてよい |
冷戦 | 対立 | 第二次世界大戦のあと、アメリカなどの西側と、ソ連などの東側が世界を2つに分けて対立したこと |
東ヨーロッパ | 地域 | ヨーロッパの東の地域。ポーランド・チェコ・ハンガリーなどが2004年に、ブルガリア・ルーマニアが2007年に加盟した |
イギリスの離脱 | できごと | 2016年の国民投票で決まり、2020年1月にイギリスがEUを離れたこと。EUを離れた初めての国 |
よくある間違い
2026年の時点で、EUの加盟国は27か国です。 2013年から2020年までは28か国でしたが、2020年1月にイギリスが離脱しました。古い資料と数が食い違ったら、何年の時点の数かを確かめてください。
ECは1967年、EUは1993年にできました。 ECが発展して、1993年に名前もEUになりました。C=Community(共同体)、U=Union(連合)で区別します。
EUができた理由は、戦争の反省と大国への対抗の2つです。 記述問題では、二度の世界大戦をくり返さないことと、1つ1つの国ではアメリカなどの大国に対抗できないことを、2つ並べて書きます。
パスポートなしで国境をこえられるのは、EUの多くの国の間でです。 2026年の時点で、アイルランドやキプロスとの間では国境での検査があります。シェンゲン協定には、EUに入っていないノルウェーやスイスなども参加しています。
ユーロは1999年に導入され、2002年からお札とコインが使われ始めました。 「導入」と「お札とコイン」の年を分けて覚えます。
2026年の時点で、ユーロを使うのはEU27か国のうち21か国です。 デンマークはユーロを使わないことを認められています。イギリスは、加盟していたころもユーロを使っていませんでした。
ブルガリアとルーマニアの加盟は2007年です。 2004年の10か国とは別の年に加わりました。
この記事の表のEUの人口・GDPは、2024年の統計で27か国を合わせた値です。 EUは1つの国ではないので、国の順位には入れません。
プリントと動画で確認しよう
このテーマの単語テストと問題集は、下のボタンからダウンロードできます。どちらも答えと解説がついています。
流れをざっと確かめたいときはアニメーション編を、数の見方までくわしく知りたいときは詳細解説編の動画を見てください(動画は準備中です)。
重要語句 EU、ユーロ、加盟国の拡大、国境での手続き