中学社会・歴史・開国と近代日本の歩み・No.57

産業革命と資本主義

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解説

日本が江戸時代の中ごろ、田沼意次が政治をしていたころ、イギリスでは物のつくり方が根本から変わり始めていました。人の手でつくっていた品物を、機械で大量につくるようになったのです。その変化は工場の中だけでは終わらず、働く人と雇う人の関係や、町の暮らしまで変えていきました。

産業革命の前のイギリス

産業革命の前、イギリスでも日本と同じように、人が工場に集まり、仕事を分けて手で品物をつくっていました。日本の単元で見た工場制手工業のやり方です。

そのころイギリスで人気があったのが、綿からつくった布、つまり木綿の布である綿織物でした。綿織物はもともとイギリスではつくられておらず、インドから輸入する品だったのです。やがてイギリスは、原料の綿花を輸入して、自分の国で綿織物をつくるようになります。綿花から糸をつむぎ、その糸で布を織る工業を綿工業といいます。原料の綿花は、すべて外国から運んでいました。

では、なぜイギリスで最初に産業革命が起こったのでしょうか。理由は1つではありません。原料の産地や製品の売り先になる植民地、工場を建てるためのお金、働く人、そして国内でとれる石炭や鉄。こうした条件がイギリスにはそろっていました。市民革命のあとで議会の政治が確立し、経済活動の自由が認められていたことも、条件の一つです。

1機械で大量生産へ イギリスの産業革命(18世紀後半)

綿工業では、糸をつむぐ機械や布を織る機械が次々に発明されました。布を速く織れるようになると糸が足りなくなり、今度は糸を速くつむぐ機械がつくられる、というように改良が連なっていったのです。糸をつむぐことは紡績とも呼びます。ここで出てくる機械や発明した人の名前は、中学では覚えなくてかまいません。

手でつくる工場から、機械でつくる工場へ。これがいちばん大きな変化です。工場制手工業に対して、機械を使う工場のやり方を工場制機械工業と呼ぶこともあります。

最初のうち、機械を動かしていたのは人の手や、川の水で回す水車の力でした。そこに使われるようになったのが蒸気機関です。お湯をわかしたときに出る蒸気の力で、機械を動かす装置のことです。

この蒸気機関を改良したのがワットです。蒸気機関はもともと、炭鉱にたまった水をくみ上げるのに使われていました。ワットはそれを、燃料の石炭が少なくてすみ、回る力も取り出せるように改良しました。そのおかげで、いろいろな機械の動力に使えるようになったのです。

水車の力に頼っていたころは、工場を川のそばに建てる必要がありました。蒸気機関なら、川から離れた場所にも大きな工場を建てられます。蒸気機関が紡績の機械を動かすようになると、綿工業の大工場が立ち並ぶ町がいくつも生まれました。同じ品物を機械で一度にたくさんつくる大量生産が、こうして広がっていきます。

機械と新しい動力によって、産業だけでなく社会のしくみまで大きく変わったことを産業革命といいます。18世紀後半のイギリスで、綿工業から始まり、蒸気機関でさらに広がりました。ただし、ある年に一気に起きたわけではありません。長い時間をかけて進んだ変化で、その大きさから「革命」と呼ばれています。

蒸気機関は乗り物にも使われました。スチーブンソンがつくった蒸気機関車が鉄道で使われるようになり、鉄道はやがてイギリス中に広がります。水の上では蒸気船も走るようになり、原料や製品、人を速くたくさん運べるようになりました。機械や線路をつくる鉄と、燃料の石炭もたくさん必要になったので、製鉄業や石炭の産業も伸びていきます。

19世紀になると、イギリスは世界でいちばんの工業国になりました。世界中から綿花などの原料を輸入し、工場で大量につくった製品を世界中へ輸出したのです。原料が入ってきて、製品が出ていく。この姿から、19世紀のイギリスは世界の工場と呼ばれました。

産業革命は、19世紀のうちにフランスやドイツ、アメリカなどへも広がっていきます。日本で産業革命が進むのは、もっとあとの明治時代のことです。

2資本家と労働者 資本主義が広がる

工場で品物をつくるには、建物や機械、原料、それをそろえるお金が必要です。こうした、ものをつくるためのもとでを資本といいます。

資本を持ち、工場を経営する人が資本家です。資本家に雇われ、賃金をもらって働く人を労働者といいます。賃金とは、働いた分にしはらわれるお金のことです。資本家は労働者を雇って品物をつくり、それを売って利益を得ます。

このように、資本家が労働者を雇い、利益を目的に生産するしくみを資本主義といいます。資本主義は産業革命の中で広がり、資本家と労働者という2つの立場が分かれていきました。

このしくみのもとで、品物はとてもたくさんつくられるようになります。一方で、新しい問題も生まれてきました。

3工場と都市の問題 労働問題・社会問題と社会主義

工場では、長い労働時間や低い賃金が問題になりました。女性や小さな子どもも、工場や炭鉱で長い時間働いていました。機械を使う仕事なので、工場の中での事故の多さもたびたび問題にされています。こうした働く人をめぐる問題を労働問題といいます。

仕事を求めて、農村からたくさんの人が都市に集まりました。都市の人口は急に増え、せまくて不衛生な住まいがたくさんできます。工場の煙もあって、暮らしの環境は悪くなっていきました。豊かな人と貧しい人の差、つまり貧富の差も目立つようになります。こうした社会全体の問題を社会問題といいます。

労働者は労働組合をつくり、賃金を上げること、働く時間を短くすることなど、働く条件を良くするよう求めました。労働組合とは、労働者が団結してつくる組織のことです。やがて、子どもの働く時間を制限する法律もつくられていきます。

資本主義の中で起きたこうした問題を解決しようとして、新しい考えが生まれます。工場や土地、機械などを個人ではなく社会全体で持ち、平等な社会をめざそうという考えで、これを社会主義といいます。

この社会主義の考えを広めたのが、ドイツ出身の学者マルクスです。マルクスはのちにイギリスのロンドンに移り、資本主義のしくみを研究して、社会主義の考えを広めていきました。社会主義の考えそのものは、マルクスより前にも唱えた人がいます。

まとめ 産業革命から社会主義までを一本の線で

ここまでの流れを一本の線でつなぐと、こうなります。

綿工業で機械を使い始める(18世紀後半)→ ワットが改良した蒸気機関で大量生産が広がる → 鉄道・蒸気船、製鉄業・石炭の産業も伸びる → イギリスが「世界の工場」になる(19世紀)→ 資本家が労働者を雇う資本主義が広がる → 労働問題・社会問題が起こる → 解決をめざす社会主義の考えが生まれる(マルクスが広める)

機械で大量につくった製品は、どこで売ればよいのでしょうか。原料の綿花は、どこから手に入れればよいのでしょうか。製品を売る市場と原料を求めて、イギリスをはじめとする欧米の国々は、このあとアジアへ進出していきます。

年表

年・世紀

出来事

ポイント

18世紀後半

イギリスで、綿工業から産業革命が始まる

産業革命

19世紀

イギリスが「世界の工場」と呼ばれる

産業革命

この単元に、西暦の年で覚える出来事はありません。時期は「18世紀後半」と「19世紀」の2つを世紀で覚えます。

用語のまとめ

用語

種類

意味

産業革命

変化

18世紀後半のイギリスで始まった、機械と新しい動力による産業と社会のしくみの大きな変化

綿工業

工業

綿花から糸をつむぎ、布(綿織物)を織る工業。産業革命はここから始まった

工場制手工業

しくみ

人が工場に集まり、仕事を分けて手で品物をつくるやり方

蒸気機関

装置

蒸気の力で機械を動かす装置。工場の機械や機関車、船の動力になった

ワット

人物

蒸気機関を改良し、いろいろな機械の動力に使えるようにした人

スチーブンソン

人物

蒸気機関車をつくり、鉄道で使われるようにした人

大量生産

つくり方

同じ品物を機械で一度にたくさんつくること

世界の工場

呼び名

19世紀のイギリスの呼び名。原料を輸入し、大量につくった製品を世界中に輸出した

資本

もとで

品物をつくるための建物・機械・原料と、それをそろえるお金

資本家

人

資本を持って工場を経営し、労働者を雇う人

労働者

人

資本家に雇われ、賃金をもらって働く人

資本主義

しくみ

資本家が労働者を雇い、利益を目的に生産するしくみ

労働問題

問題

長い労働時間・低い賃金・子どもの労働など、働く人をめぐる問題

社会問題

問題

都市の暮らしの環境の悪化や貧富の差など、社会全体の問題

労働組合

組織

労働者が団結してつくる組織。働く条件を良くするよう求めた

社会主義

考え

工場や土地などを社会全体で持ち、平等な社会をめざそうという考え

マルクス

人物

ドイツ出身の学者。資本主義のしくみを研究し、社会主義の考えを広めた

よくある間違い

ワットについて書くときは「改良した」と書きます。 蒸気機関はワットより前からあり、炭鉱の水くみに使われていました。ワットはそれを、いろいろな機械を動かせるものに変えた人です。

産業革命は綿工業から始まりました。 糸や布をつくる機械が先に生まれ、その動力に蒸気機関が使われて、さらに広がりました。並べかえ問題では「綿工業 → 蒸気機関」の順になります。

産業革命の始まりを、西暦の1つの年で答える問題は出ません。 長い時間をかけて進んだ変化なので、始まりの年は1つに決まっていないのです。「18世紀後半、イギリス」とセットで答えます。

「世界の工場」は、歴史では19世紀のイギリスです。 今の時代にも、ほかの国がこう呼ばれることがあります。歴史のテストで聞かれたら、19世紀のイギリスを思い浮かべてください。

資本家と労働者を逆にしない。 工場や機械を持って人を雇うのが資本家、雇われて賃金をもらうのが労働者です。

労働問題と社会問題は、範囲がちがいます。 長い労働時間や子どもの労働は、働く場所の問題なので労働問題。都市の住まいの悪さや貧富の差は、社会全体の問題なので社会問題です。

社会主義が生まれた理由は、記述でよく問われます。 「資本主義の中で起きた労働問題や社会問題を解決するため」と、資本主義とのつながりで書けるようにしてください。マルクスは、その考えを研究して広めた人です。

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流れをもう一度確認したいときはアニメーション編、くわしい理由まで知りたいときは詳細解説編の動画をどうぞ。

重要語句 蒸気機関、綿工業、資本家と労働者、社会主義、マルクス

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